ブームは過ぎ去った気がしますが、入手したので読んでみました。表紙は何の絵なんでしょうか。テーブルクロス? ただのうねうね?
あらすじ
若手漫才師である「僕」は同じ漫才師の神谷に惚れこみ、師弟関係になる。神谷は笑いに対する純粋さは人一倍あったが、その生活力のなさから借金を膨らませていく。やがて「僕」と神谷は別の道を行くことに。
神谷のキャラクターがすごい
神谷のことを「僕」が語るという形式になっている小説です。この神谷のキャラクターが壮絶。
自分自身の笑いを追い求め、そのためには他を切り捨ててもかまわないと思っています。
やっていることはすべてダメ人間の行動なのに、「僕」が神谷に惹かれていくのもしょうがないと思えるような、とんでもない魅力を持っています。
ただ神谷の魅力を理解できる人は少数派なので、仕事がなくどんどん借金を抱え込んだり、売れない芸人として侮ったりしてしまいます。それはそれでどうしようもないことだと思います。神谷にとって「売れる」より自分自身の笑いを追求するほうが大事なんですもんね。
さらりと終わるエンディングが印象深い
作品の終盤に神谷がとんでもないことをしでかすのですが、あの展開がありながらラストはさらっと終わるのが印象深かったです。
「僕」と神谷の人生はここで終わりではなく、読者が本を置いた後も続くということなのかもしれません。読み終わったあとも、どこかで神谷が生きているような気がして、その現在を想像してみて悲しいような面白いような気持ちになりました。
エンタメ作品ではやらないような終わり方でした。たまに純文学を読むと、そのあっけなさにびっくりすることがあります。それが嫌いとかではなくて、物語にドラマ性は必ずしも必須のものではないと気づくんですよね。
まとめ
すごく好き、というわけではないですが、印象に残る本でした。エンディングのあとも神谷はばかやり続けているんでしょうね。
他人の人生を覗き込んだような気恥ずかしさと、それを楽しんでしまう野次馬根性と、友人の破滅を見たような虚しさがありました。