ブックワームのひとりごと

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地図に載らない島で失くしたものを知る 河野裕『いなくなれ、群青』感想

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いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

表紙がかっこよかったので気になっていた本です。

 

あらすじ

地図に載っていない島、階段島。そこを出ていくには、「失くしたもの」を取り戻さなければならない。主人公の七草は、小学校からのつきあいの真辺と再会する。彼女はなんとか階段島から出ていこうとするが……。

 

彼らが失くしたものは何か

この作品の大きな筋となっているのが、「彼らが失くしたものは何か」という問いです。

ラストでそれが明かされたとき、何とも言えないさびしさがありました。彼ら自身にはどうすることもできない、残酷な事実でした。

しかしちゃんと彼らには彼らなりの救いがあって、幸福があるということも示されたのがよかったです。いらないものであっても、ここでは必要としてくれる人がいるんですよね。

ただ一般的な幸せだけをハッピーエンドとしないところは好きです。

フィクションであることは前提として、この世のどこかにこんな島があったら面白いなと思える、個性的な話でした。

 

読んでいて恥ずかしくなってくる文章

話の流れや設定は好きなんですが、文章が非常にキザなもんだから読むのがつらかったです。冒頭を引用すると、

どこにもいけないものがある。

さびついたブランコ、もういない犬の首輪、引き出しの奥の表彰状、博物館に飾られた骨格標本、臆病者の恋心、懐かしい夜空。

(P7)

終始こんな感じです。

文章は下手ではなく、むしろ上手いほうだと思うんですが、読んでいて自分の黒歴史を思い出してしまって本題どころではなかったです。

その代わり、この引用部分を素直にかっこいいと思える人には楽しめる本なのではないかなと思います。

同じ作者の『ベイビー、グッドモーニング』ではあまり気にならなかったのに不思議ですね。

 

まとめ

文章のキザさがだいぶつらかったんですが、好きな人は好きな話だと思います。

 ポエマーのまま大きくなってしまった人なら楽しめるかもしれません。

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)