書籍概要
逃げ込んだ孤島にいた軟体動物との暮らし、何度も生まれ変わる女性が見た時代の流れなど、沖縄を舞台にした幻想小説短編集。
情景の美しさ、人間の生々しさ
描かれている沖縄を読んでいると、南国の匂いが漂ってくるようでした。
情景の美しさと、登場する人間たちの生々しい感情のギャップを感じました。二つの要素が引き立て合っていると思います。
各話感想
「弥勒節」
死の間際に弥勒節を弾く女性の胡弓を手に入れた男。島には「ヨマブリ」と呼ばれる謎の現象があった。
残酷な話でした。夢と現実の間を歩くような浮遊感を感じました。
「クームン」
妖怪のようなもの「クームン」と少年の交流を描く。
何も考えずに読み進めているとオチにぎょっとしました。なるほどそれは考えてなかったなあ……。
「ニョラ穴」
犯罪を犯して無人島に逃げ込んだ男は、狂った男に出会う。彼の言う「ニョラ」とは……。
気味が悪い話しながら、どこか面白い夢から覚めた時のような興奮を覚えました。結構わくわくします。
「夜のパーラー」
男が出会った娼婦。彼女の祖母は人間ではないらしく……。
登場する女の子がいい性格してて好きです。なかなかたくましくて笑ってしまいました。
「幻灯電車」
おばけ電車と、人を殺した女性の話。
人が人を殺そうと思う過程が、真に迫っていて怖かったです。こういうことがあるかもしれないな、という生々しさがありました。
「月夜の夢の、帰り道」
暴力沙汰で刑務所に入った男は、不思議な女性のもとで居候することになる。
時間SF的な展開をする話でした。さらりとした終わり方でしたが、それが逆に余韻があってよかったです。
「私はフーイー」
何度も生まれ変わるフーイーという女性。彼女はどこに行くのか……。
生まれ変わりの能力を持つゆえ苦労するフーイー。彼女を殺した人間の末路はなんだかあっけなく、それゆえに悲しさを増幅されました。
まとめ
幻想と美しさ、醜い感情の間をさまようようで面白かったです。
また機会があったら他の本も読みたいですね。