あらすじ
タヌキゲームにはまってしまったインターン先の社員、何でも入る冷蔵庫、宇宙人の襲撃を受けている農地……。ごく普通の日常にシュールな題材を交え、絶望とユーモアをもって人間を描き出す短編集。
うすぼんやりした絶望がある
普通の社会に唐突にシュールな題材が混ざってくるので、最初は混乱しました。しかし慣れてくるとなんともいえない面白さを感じるようになりました。
主人公は金銭的に苦労している人間が多く、資本主義に疲れ、これからの人生に言葉にしがたい不安を覚えています。その不安感は、日本も韓国も変わらないなと思いました。
わけのわからない部分は多いけれど、描かれている絶望はなんだか親しく感じてしまいます。
話ごとの感想(ピックアップ)
収録されている数が多いので抜粋で。
「カステラ」
表題作。冷蔵庫に何でもかんでも入れてしまえるようになった主人公は……。
冷蔵庫にとんでもないものを入れていくのがリズミカルで楽しかったです。それでいて、どこか不穏なのがいい。
「ありがとう、さすがタヌキだね」
インターン先の社員がはまったタヌキのゲーム。はたしてタヌキとは何なのか……。
就職氷河期における過酷なインターンが読んでいるだけでつらくなってくるのに、そこにタヌキが入ってくることですっとぼけた内容になってます。
悲しんでいいのか笑っていいのかわからない作品。
「あーんしてみて、ペリカンさん」
おんぼろの遊園地で働く主人公は、スワンボートの池を管理している。しかしその池に思わぬ存在がやってくる。
スワンボートが飛ぶという面白映像が癖になります。それでいて、うすぼんやりした不安感はそのままなんですよね……。
見た目だけならおもちゃのように楽しげなんですけどね。
まとめ
韓国文学って初めてですが、新鮮で面白かったです。他の小説も読んでみたいですね。
笑っていいのか悲しんでいいのか、読んでて混乱しました。でもそこが個性なんですよね。