ブックワームのひとりごと

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戦争を生き延びたある女性の「普通」な毎日 こうの史代『この世界の片隅に』前後編感想

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この世界の片隅に(前編) (アクションコミックス)

映画が面白かったので原作も読むことにしました。

表紙の画材は水彩かなあ。

 

あらすじ

広島から呉へと嫁いだすず。夫とその家族とおだやかに暮らすが、その端々に戦争の影は迫っていた。やがて呉への空襲が始まり、一家は毎日のように防空壕に潜る。そして、ある悲しい出来事が……。

 

映画版とは結構違う

映画版ではカットされたエピソードが多く、面白かったです。

一見ほのぼのした関係なんですが、さらっと悪意が埋め込まれていたり、良く考えると怖かったり。読解力がないと気づくのが難しい作品です。読者に高度なことを要求してきますね……。

リンと周平の関係は映画では描かれなかったので、こんな設定が……とびっくりしました。なるほどすずはすごく複雑だろうなあ。

それでもそこに流れる家族の温かみ、大切な人と過ごす時間は本物です。だからこそすずは戦争を生き延びることができたのだろうなと思います。

そしてその幸せが失われる瞬間はとてもつらいですね。

 

普通でいることの困難さ

漫画で見ると、映画で一回見ただけではわからなかった部分が、わかってきた気がします。

戦争が起こってもすずはふわふわしてておっちょこちょいのままで、のんびり時が過ぎるんですが、すずの月経が止まってしまったのがわかるシーンがあります。

おっとりとしたすずの中の見えないストレスや、十分な栄養が取れていないことが察せられて、本当に何気ないシーンなのに印象的でした。

辛いことも理不尽なことも、日常の一部として淡々と描かれています。そしてそれが「日常」になってしまうのが戦争の恐ろしさなのだろうと思いました。

その中ですずが普通でいることは、どれほど困難なことだったろうと思います。

 

まとめ

漫画で見返すと新たな発見がありました。映画はうまくエッセンスをまとめているんですね。

映画ではカットされた部分、表現の違う部分を比べてみるのが面白かったです。映画が好きな人は一読するのをおすすめします。

この世界の片隅に(前編) (アクションコミックス)

この世界の片隅に(前編) (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に(後編) (アクションコミックス)

この世界の片隅に(後編) (アクションコミックス)