有名作品だけれど実は読んだことがなかった話です。愛蔵版を見かけたのでこの機会に手に取ってみました。
あらすじ
少女、蛍は、山で不思議な青年ギンと出会う。彼は人間に触れられると消えてしまう存在だった。夏が来るたびに、二人は山で一緒に遊ぶ。やがて蛍は高校生になり……。
映画化された「蛍火の杜へ」を中心とした短編集。
どこか切ない日常の話
どの話も劇的なシーンはないのですが、その分キャラクターの心情をじっくり楽しめてよかったです。
過ぎ去ってしまった時間へのいとおしさ、それを胸に抱いて生き続けることの切なさを感じました。懐かしい気持ちになれる短編集です。
各話感想
「蛍火の杜へ」
表題作。人間に触れられると消えてしまう不思議な存在のお話。
わりとド直球な話なんですが、それゆえに小細工なしで響きますね。
一瞬の儚い触れ合いが永遠のものになるという、夏にふさわしい優しい物語でした。
「体温のかけら」
ずっと好きだった男の子に彼女ができ、葛藤する女の子の話。
「自分が一番になりたかった」という心情が切なかったです。彼の幸せを望んではいるのだけれど、すぐには割り切れない。そんな複雑な気持ちがよく表されていました。
少しあいまいに終わってしまったけど、この終わり方だからこそ余韻に浸れるのだろうと思います。
「星も見えない」
チャラい遊び人の男の子が、地味な女の子に恋する話。
出会いによって自分の内面を見つめなおし、新しい感情を見つける過程は恥ずかしいくらいに恋でした。
簡単に幸せにはなれなさそうだけれど、それでも幸せを願いたくなりますね。
「蛍火の杜へ 特別篇」
「蛍火の杜へ」の特別篇。ギンが蛍に柿を食べさせてあげたいと願う。
平凡な日常話だけれど、キャラクターたちがお互いにお互いのことを大切に思っていることが感じられてほっこりしました。
まとめ
面白かったです。やっぱり短編漫画は好きですね。小粒でもぴりっとした辛さを感じます。
またいろいろなところで短編漫画を漁ってみたいです。