ブックワームのひとりごと

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日本の抱える「コミュニケーション」の矛盾 平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』感想

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わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)

 

書籍概要

最近とみに叫ばれている「コミュニケーション能力」しかし日本においては、その言葉は大きなダブルバインドを抱えている。著者は演劇プログラムの経験を通して、本当の意味でのコミュニケーションとは何かを語る。

 

日本におけるコミュニケーションとは何か

「コミュニケーション力」という言葉になんとなく違和感を覚えていたので、著者の主張にはうなずかされるところが多かったです。

「主張する」「自分の考えを説明する」という能力と同時に「空気を読む」「周りに合わせる」という能力を要求されるやりにくさよ……。私はアスペルガーなので、この二つを同時に要求されるとにっちもさっちもいかなくなります。

定型発達者であっても、この要求は自分の中に大きな矛盾を抱えることになるからしんどいだろうな、と想像しました。

ただ「空気を読む社会」というのは悪いことばかりではなくて、ハイコンテクストな「短歌」や「俳句」の芸術を生み出すことになりました。そのフォローもちゃんとなされているところがよかったです。

 

一冊の本としては詰めが甘い

意見としては面白かったけれど、一冊の本としてはちょっと詰めが甘いかな、という部分もありました。

この本では現代社会のいろいろな部分を引き合いに出していましたが、その部分がぼんやりしていて、著者の経験に基づくものなのか、それともただふんわりした印象からそれを言っているのか、わからないところがありました。ソースのない話は気になってしまって素直に読めませんね。

あと本題に関係があるのかないのかわからない著者の身の上話が長く続くのも面倒でした。

著者は芸術家であって学者ではないし、その辺はしかたがないかもしれません。

新書は専門書より軽い読み物という位置づけだし、わざとやってる可能性もあるので批判するのも筋違いかもしれません。

 

まとめ

主張の内容は腑に落ちる部分が多くて面白かったです。

若干フワフワした部分が多かったので、本の信頼度としてはそこそこに考えておきたいと思います。