セールで買ったもの。おまけ掌編が入ってないとかケチだな……!
あらすじ
軍属でありながら独自の方法で諜報活動を行う「D機関」。彼らは戦時中の日本で暗躍する。太平洋戦争開始直前、陰謀渦巻く世界で彼らが見たものとは……。スパイたちの活躍を描く連作短編。
展開が読めてしまった話がふたつ
展開が読めてしまった話がふたつあるので、そこは損をしてしまった気分です。伏線や、心理描写ではなく、話の構造で話が読めるのはつらいですね。
それ以外の話は面白かったです。戦争を美化するでもかわいそうなものとして書くでもなく、基本ビジネスライクに描いていくのが面白いシリーズです。
「ダブル・ジョーカー」
D機関のライバル組織「風機関」と争う回。
ライバル組織登場! っていうのは燃えどころなのに、敵がしょぼすぎて全くどきどきしませんでした。
スパイの正体もすぐわかってしまったので消化不良。
「蠅の王」
共産主義者のスパイが主人公。彼が探しているD機関のスパイは誰か……。
スパイの正体に気づいてしまいました(二回目)。リストを作られたらそこに載ってない奴を疑いますよね。
伏線ではなく、物語の構造でオチに気づいてしまうのはつらいです。
「仏印作戦」
仏印に赴任した男が、スパイ戦に巻き込まれ……。これは面白かったです。オチにびっくりしました。
二重三重に偽装されたストーリーが楽しめました。スパイだと思ったら実は……という種明かしがよかったです。
「棺」
ナチス政権下のドイツで、スパイをあぶりだす仕事をしている男。彼は日本のスパイを捕まえようとやっきになる。
D機関のスパイ・マスターの過去が少しだけわかる作品。一瞬で大事なものと捨てていいものの判断を付けることにしびれます。
「ブラック・バード」
妻子を持ってスパイをしている男。彼が接触した外務省の男は実は……。
D機関のスパイ視点の物語であるせいか、人間味があって面白かったです。完璧超人のスパイのふとした油断、それは失敗なのに親しみが持てます。