あらすじ
宇宙人の「帝国」が人類を支配して500年。帝国は効率的に支配をするために、人類が持つ神話を利用した。宇宙人に与えられた神話の中でときに抗い、ときにやり過ごす人類たちを描いた連作短編。
ときに従順に、ときに抗い神話を作る
宇宙人に支配されている、というと人類の反抗の物語を想像するかもしれませんが、それとはちょっと違います。
この作品の中の人類は、神話に対してときに従順に、ときに抗い、態度を使い分けてしたたかに生き抜いています。
ひょっとしたら、神話が身近だった古代人も、こういう態度で生きていたのかもしれないと思いました。
各話感想
「イワとニキの新婚旅行」
岩の巨人と結婚することになったニキ皇子。彼女と遺伝情報を運ばなければならなくて……。
天孫とイワナガヒメ、コノハナサクヤヒメの結婚をテーマにした作品。
異種婚姻譚は数あれど、嫁のほうが岩でできた巨人というのは初めて見ました。
「神託と灰色の髪の少年」
帝国が作り出したAIのアポロン神。地球上のあらゆる芸術を収集する彼によって、世界中から集められた芸術家たちは……。
終わり方がすごくいいです。あのアポロンの一言があってこそ輝く作品でした。
「アンドロメダ号で女子会を」
宇宙船の中の三人のアンドロメダたち。彼女たちにはある使命があった。
めちゃくちゃ苦労しているはずなのに、話はどこかゆるいです。確固とした自己を持っている女性は見ていて楽しいですね。
「さよなら私の兵馬俑」
デジタル世界の中に再現された桃源郷。そこはバーチャルの中の「あの世」だった。
兵馬俑さんたちがとてもけなげでいとおしくなってきます。仮想空間とはいえ、彼らにとっては大切な現実だったんでしょうね。
「海の女神と旅立つ船」
若い女性が、初老の女性を訪ねてくる。彼女には秘密があった。「さよなら私の兵馬俑」の続編。
不思議な空間でも、知った人の手を取らないのがシビアというか、象徴的でよかったです。これからの生活を示唆するストーリーで下。
まとめ
神話とSFという取り合わせが面白かったです。
人類のしたたかさを感じるストーリーでした。