ブックワームのひとりごと

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プロのスリとギャンブル狂いの占い師が出会った悪の少年 佐藤多佳子『神様がくれた指』感想

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神様がくれた指 (新潮文庫)

事前情報を調べていなかったので、表紙の占い師はてっきり女性だと思っていました。

 

あらすじ

刑務所から出たばかりのスリ、辻は電車で少年少女のスリ集団を目撃する。そのひとりを追いかけてけがをした辻は、昼間という占い師に助けられた。昼間と同居しながら少年たちを追う辻。一方昼間も、占いを通して事件の一部に触れていた……。

 

スリと占い師のブロマンス

この作品、すごくブロマンスでした。出版された当時はブロマンスという言葉が一般的ではなかったと思いますが。

友情というにはちょっと色気があって、愛情と呼ぶには乾いている。そんな不思議な関係がとてもかっこいいです。

ブロマンスのいいところはあくまで恋愛ではないので、他のキャラクターといい感じになってもいいところですね。好きなキャラを中心にいろんな「愛」が成立するのはいい……。

私がわくわくするんだから、好きな人はめちゃくちゃ萌えるのではないでしょうか。ブロマンスが好きな人にはぜひ読んでほしいです。

 

少年ハルの嫌な奴っぷり

辻がスリを探すうちに、ハルという少年が浮上してきます。そしてもう一方、昼間も占いの客からハルという存在を知ります。

そのハルが、すごーく嫌なやつで、悪役にふさわしくてよかったです。こんな男は嫌だという要素を煮詰めて作ったようなキャラでした。

しかしながら、辻はスリという犯罪者なので、そのハルとどのくらい違うのか? という問いもあります。

ネタバレになるのでぼかしますが、辻は自分が犯罪者であることによって、大切な人を傷つけてしまいます。その因果応報があってこそ、この作品は「悪ってすばらしい」という作品にはならず、倫理を保っていました。

オチは消化不良な部分もありますが、勧善懲悪な展開はこの作品に似合わないだろうし、昼間と辻の友情物語としてはこれが一番よかったのかもしれないと思いました。

 

まとめ

ブロマンスに魅力を感じる人にはぜひ読んでほしいです。

もう新刊では買えないようなので、マーケットプレイスか古本屋で探してみてください。

神様がくれた指 (新潮文庫)

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明るい夜に出かけて

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