ブックワームのひとりごと

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あいまいな感情を言語化してくれる短編集 吉本ばなな『とかげ』再読感想

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とかげ (新潮文庫)

この方時期によってよしもとだったり吉本だったりするので、ブログの作家タグをどっちに合わせるか悩みます。

たぶん中学生くらいの頃に読んだけれど、内容をきれいさっぱり忘れてました。

 

あらすじ

鍼灸師をやっている女性「とかげ」にプロポーズした「私」。しかしとかげには、「私」に隠していることがあった。人を癒す人の過去とこれからを描いた表題作ほか、短めの短編を集めた一冊。

 

あいまいな感情を整理する

吉本ばななの本に対して、「癒し」という言葉は陳腐すぎてあまり好きではないです。

読んですっきりするのは、著者が世の中にあるあいまいな感情を、整理して言語化して提示してくれるからだろうなと思います。

だから読んでいて自分の感情を清算されている気分になります。そこが好きです。

 

各話感想

 

新婚さん

新婚の男性が、電車内で不思議な人に出会う。家で待ってくれている人へのよくわからない恐怖の話。

昔私の父親がなかなか家に帰ってこなかったことを思い出しました。彼も帰りたくなかったのかなあ。

 

とかげ

表題作。鍼灸師とかげにプロポーズすると、彼女は自分の秘密を明かして……。

人を癒す人の抱える業みたいなものを感じました。でもそれでも、治したいと思ってしまうんですね。

 

らせん

記憶を失うセミナーに出ようとしている彼女。私は彼女と会話するが……。

謎のセミナーについて話しているだけなのに不思議と面白いです。テンポがいいからでしょうか。

 

キムチの夢

不倫から結婚した女性は、ふと日常の中で不安を覚える。

「不倫したからまた不倫するんじゃないか」という不安は、どこまでもついてくるものでしょうね。平和な中にあるうっすらとした不穏さが面白かったです。

 

血と水

新興宗教の村で育った主人公は、お守りのようなものを作っている男性と出会い恋をする。

新興宗教に耐えられなくて家を出たのに、新興宗教っぽい人に恋に落ちるのが、なんだか象徴的でした。

 

大川端奇譚

若いころたくさんのセックスをした女性が結婚することになった。

危ないだろうと思いつつ、ちょっとうらやましいところもありますね。

男の懐の広さにびっくりです。

 

まとめ

久しぶりに読むといい感じに内容を忘れていて面白かったです。

どれも楽しめる短編で、粒ぞろいの作品だと思いました。

とかげ (新潮文庫)

とかげ (新潮文庫)

 
吉本ばなな自選選集〈4〉Lifeライフ

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