好きだった本を読み返すシリーズ。『ヴァンパイア・サマータイム』を読んだのは結構最近なのに、かなり内容を忘れていてちょっと悲しかったです。
あらすじ
吸血鬼と人が共存する世界。両親の経営しているコンビニで働くヨリマサは、毎日紅茶を買いに来る吸血鬼の少女が気になっている。会話するようになったふたりは、小さな事件を経て仲良くなっていく……。
文章がべらぼうに上手い
ボーイミーツガール、異種間の恋と、直球なストーリーであるこの作品ですが、まずお勧めしたいポイントは文章がべらぼうに上手いこと。
美しいけれど自然で、きざな感じがしない。ライトノベル作家の中でも文章の上手さはトップクラスになると思います。
特に好きなのが、冴原の家に泊まり、夜少しだけ冴原と逢瀬するヨリマサの独白。
自分の体も彼女の体も闇に隠され、心だけがあると思った。それを見つけた。それを見せるしかなかった。(P232)
暗闇の中の逢瀬を「心だけがある」と表現する詩的さに震えるほど感動しました。
適度に愚かな高校生活
この話は高校生同士の恋愛を描いた本です。よってちょっと登場人物が愚かなのですが、いらつかない絶妙な愚かさ加減なのがよかったです。
特にヨリマサが、冴原が優等生であることを知ったこの心の声が好きです。
(冴原って頭いいんだ……何だよ……駄目だ、かわいすぎる!)
彼はそうしたギャップに弱い傾向があった。(中略)
(いや、でも、逆に冴原が全然勉強できなかったとしたら……? ああっ、それもかわいい! アホの冴原かわいい!)
アホなのはお前だよ! と突っ込みながらも、恋に浮かれているヨリマサをよく表しているシーンだと思います。
行動は子どもだけれど、共感したり昔を懐かしんだりできる「子どもっぽさ」なので読んでいていらつくところがなかったです。
まとめ
久しぶりに読んでも面白かったです。やっぱりこの著者は文章が上手いです。
また、忘れたころに読み返したいです。