久しぶりに読み返したくなった漫画です。
あらすじ
ポーランドの町々にカギ十字の旗が翻った。ごくふつうの暮らしをしていたユダヤ人たちは、その日からナチスの脅威にさらされていく。ゲットー。隠れ家。闇市。裏切り。収容所。死の恐怖。脱出行。…日々の営みの細部を丹念に掘り起こしつつ、奇跡的に生きのびた父の驚くべきライフ・ストーリーを等身大で描きだす。物語は、戦時下のヨーロッパと現在のニューヨークを行き来しながら展開する。老いた父との自らの葛藤を同時進行で織りこみ、作者はホロコーストの時代と自分たちの時代を互いに
照らしだそうとする。世界で高い評価をうけている傑作コミックの待望の邦訳。
(Amazonより)
親子関係のリアルさが面白い
この作品の面白いところは、戦争の悲惨さだけでなく、同時に親子の断絶を描いているところです。
著者であるアートは、父親であるウラデックを理解しようとしますが、ケチでわがままな彼とはけんかばかり。肉親なので見捨てることもできません。
そういう親子の断絶を目の前にした無力感、虚しさがリアルでそちらはそちらで鬱々となります。
アートとウラデックほどではないにせよ、親を理解することは難しいです。世代の違い、考え方の違い、境遇の違い。
血がつながっているだけでお互いまったくの別人なのに、「親だからこそわかってほしい」「子どもだからこそわかってほしい」とつい考えてしまうのも、親子関係のあるあるですね。
擬獣化を効果的に使っている
この漫画では、ユダヤ人はねずみ、ドイツ人は猫、ポーランド人は豚と、人種ごとに動物になっています。
人間をねずみや猫に擬獣化していることによって、どこか突き放したような、クールな印象を持ちます。
そしてそれが、地獄のような場所で、生きるために何でもした日々を示しているようでよかったです。
鬱々とした話ですが、お涙頂戴にならない、冷静な部分があるのでこちらとしても読みやすかったです。
アメコミなので、日本の漫画になれているとちょっと読みにくいですが、それでも読む価値がある作品だと思います。
今は絶版状態なので、図書館で探してみてください。
久しぶりに読みましたが、やっぱり名作です。いろんな人に読んでほしい本ですね。

- 作者: アート・スピーゲルマン,Art Spiegelman,小野耕世
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 単行本
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