書籍概要
席を譲らない“やさしさ”,好きでなくても結婚してあげる“やさしさ”,黙りこんで返事をしない“やさしさ”…….今,従来にない独特な意味のやさしさを自然なことと感じる若者が増えている.悩みをかかえて精神科を訪れる患者たちを通し,“やさしい関係”にひたすらこだわる現代の若者の心をよみとき,時代の側面に光をあてる.
(岩波書店公式HPより)
ホットよりもウォームな関係
昔の「やさしさ」は相手に深く共感し、同情を示したり慰めたりすることが中心でした。一方で、相手の心に立ち入らないことこそが、新世代の「やさしさ」であると言います。
それをこの本では、「ホットではなくウォーム」という表現をしています。
私も心の中をいろいろ詮索されるの嫌いだし、ホットなつながりよりウォームなつながりが好きだし、他人ごとではありませんでした。
思えばオタク同士の付き合いも、誰がどこで働いているのかすら知らず、家族構成も未婚か既婚かも知らないことが多いです。それでも好きなものを中心につながっていられます。
そういう関係そのものが、上の世代にはちょっと異質に感じるのか、と逆に驚きがありました。
若者に困惑する上の世代
私は新時代の「やさしさ」を好むタイプだと思うんですが、それでも「やさしさ」に困惑する著者をありありと想像できて、同情的になってしまいました。
著者は「やさしさ」を頭ごなしに否定するのではなく、分解し、旧世代の「やさしさ」との違いを見出そうとします。その過程が丁寧なので、こちらとしてもわかりやすいです。
若い世代の人が、上の世代とのジェネレーションギャップを知るためには、この本は有用だと思います。
ただ、患者との対話がちょっと上手くいきすぎているのでどのくらい本当なのかな、と思います。医療系の話なので、そのまま書くわけにはいかないだろうし、脚色はつきものですが。
あらすじを見ると身構えてしまうかもしれませんが、決して若者を批判するだけの本ではないので、同世代に読んでほしい本です。
ジェネレーションギャップについて知ることができました。
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