ブックワームのひとりごと

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だめだけど自分に酔ってはいない―富士屋カツヒト『打ち切り漫画家(28歳)パパになる』感想

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打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。 (ヤングアニマルコミックス)

今日の更新は富士カツヒト『打ち切り漫画家(28歳)パパになる』です。

一冊完結の漫画をまとめ買いしました。その中の一冊です。

 

あらすじ

漫画を連載中の著者は、妻に「子どもがほしい」と持ちかけられる。連載はあえなく打ち切り、そして妻は妊娠する。妻子を養うために著者は大工仕事を始めるが、あまり向いていない仕事のようで……。男性の視点から「子どもを育てること」を描いたコミックエッセイ。

 

自分を冷静に見る力がある

女性とは違うな、と思うところは、「子どもを養うこと」を第一に描かれているエッセイだということです。

これで女性の描いたエッセイだったら、「子どもを死なせず育てること」がメインになりそうな気がします。

どちらが正しいというわけではなくて、子どもとの距離感や、家庭での役割の違いがあるからそうなってしまうんだろうなと思います。

 

著者は結構情けない人で、せっかくついた仕事を辞めてしまったり、だめになりそうな連載を断れなかったりします。

ただ、自分のだめさに関して酔った感じがしませんでした。少し離れたところから、冷静な視点で見ています。

作品途中で仕事を辞めようとして、上司に引き留められ、一旦考え直した次のページのモノローグがこちら。

こんな安っぽい決意で変わることができるなら僕は漫画家として売れている

現実は漫画のようにうまくいくわけがない 人は簡単に変わることなんてできないのだ

(P82)

この言葉がちょっといい話の次に書かれているものだからヒヤッとしました。

ここだけ抜き出すと普通の言葉だけれど、この流れでこう書いてしまうのは、勇気があるなと思いました。

 

最後まで読んでも、金銭的に安定はしていない生活で、余計なお世話ながら心配になります。

けれど、この、「自分のことを冷静に見る力」をずっと持つことができれば、人生何とかなる気がします。

自分を客観的に見ることができれば、きっと対策も立てられるので。

 

まとめ

 これからの問題が山積みだし、お世辞にもかっこいいパパとは言えないのですが、人生がんばってほしいと思うコミックエッセイでした。

どんなときも、自分を表現する力は自分を助けてくれる。そう思いたくなりました。

打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。 (ヤングアニマルコミックス)

打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。 (ヤングアニマルコミックス)