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ご飯を通して思い出す美しい記憶―miobott『上島さんの思い出晩ごはん』感想

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上島さんの思い出晩ごはん (TO文庫)

今日の更新は、『上島さんの思い出晩ごはん』です。

web小説『ただいま、おかえり、いただきます』の書籍化です。

 

あらすじ

素性を知らないまま、一緒に暮らしていた男性「上島さん」。しかし彼は交通事故で死んでしまった。民子は彼の思い出をなぞりながら、今日も晩ご飯を食べる。そのうちに、民子の気持ちも変わっていき……。

 

ストーリーとかみ合った食べ物小説

ひたすら女性がご飯を食べる話です。内容的にはかなり地味なんですが、特徴的なのは食べることで彼女と上島さんの過去が明かされていくところです。

ただの飯テロ小説ではなくて、登場する食べ物とストーリーのテーマがきっちりかみ合っています。だからこそ押しつけがましくない形で感動できる作品になっています。

 

もちろん飯テロ小説の大きな特徴である、「食べ物のおいしそうな描写」もきっちり押さえています。

民子がインスタントラーメンを食べる描写がこちら。

 冷蔵庫の奥に、バターが余っていた。それと、開封したばかりの黒挽き胡椒。

 固いバターをスプーンですくってたっぷりとスープに落とすと、表面にいかにも美味しそうな油の膜が浮かぶ。その上に胡椒をはらりと落とす。

(ロケーション2263)

こういうシンプルで、ジャンクな食べ方が出てくるところが生活感があって好きです。

他にもおにぎり、カレー、とうふごはん、ファストフードのハンバーガーなど、食べようと思えば簡単に食べられるものが登場します。おかげで、読むと何か食べたくなって困ります。

ある意味、豪華な食べ物が出てくるよりお腹がすく作品でした。

 

web版にはなかった書き下ろしもよかったです。これがあることによって少し、作品の方向性が変わった気がします。素敵な終わり方でした。

 

まとめ

とても面白かったです。作者にはマイペースに小説を書き続けてほしいです。

 また、機会があればこの人の作品を読みたいですね。

上島さんの思い出晩ごはん (TO文庫)

上島さんの思い出晩ごはん (TO文庫)

 

 

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