ブックワームのひとりごと

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架空のスポーツをさもあったかのように語る手腕に脱帽―天沢夏月『サマー・ランサー』感想

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サマー・ランサー (メディアワークス文庫)

今日の更新は天沢夏月『サマー・ランサー』です。

一巻完結ライトノベルの紹介にあった本です。

 

あらすじ

剣道の才能を持ちながら、祖父の死をきっかけに剣道をやめた天智。そんな彼は、高校入学をきっかけに「槍道」に出会う。天智は槍道部の仲間たちを通し、槍という武器に魅力を感じていく。

 

架空のスポーツだということに衝撃を受けた

この文庫本で一番衝撃的だったのは、本文よりもあとがきでした。

まずはじめにおことわりを。本作に登場する槍道という競技は、作中において存在する架空のスポーツであり実在しません。

(P280 あとがきより)

ええええ、まじで!? あとがき読むまで実在するスポーツだと思ってましたよ!

それだけこの小説の、嘘とはったりがうまいということ。いやー気持ちよく騙されましたね。

架空のスポーツを作り上げる過程がとても丁寧で、ネタ晴らしを受けた後も評価が変わりませんでした。

 

ストーリーの中で印象的だったのは、天智が祖父の道場で練習するシーンで、祖父の言葉がよぎるところ。

――強さを焦るやつは、自らが弱いと叫んでいるのと同じじゃ。

(P214)

 この言葉の強さにどきっとしました。そして天智は「強さを焦った」結果とんでもないことをしてしまいます。

焦りはときに人を弱くする。そういうときにどっしり構えておけるのが重要なのかもしれません。

 

まとめ

架空のスポーツということにすごくびっくりしましたが、ストーリーとしては王道の青春もので面白かったです。

始めから終わりまで楽しく読めました。

サマー・ランサー (メディアワークス文庫)