今日の更新は、城平京『雨の日も神様と相撲を』です。
表紙のイラストがめちゃくちゃかわいいですね。
あらすじ
事故で両親を失った文季(ふみき)。引き取られた叔父の元に向かうと、そこはカエルを崇め、相撲を中心として生活している村だった。子どものころから相撲の英才教育をされてきた文季は、何かと声をかけられるようになるが……。
卑屈な主人公の意外な一面
読み始めた当初は、主人公の文季のことがあまり好きではありませんでした。
主人公、卑屈だし失礼だし、他人の褒め言葉を素直に受け取らないので、「嫌な奴だなー!」と思いながら読んでいたんですが、ラストの彼の行動にやられました。
文季がそんなことを考えていたなんて、びっくりしましたよ。一気に彼が好きになりました。
確かにこれは、文季が明るくて前向きな主人公だったら書けなかったストーリーです。
ネタバレになるので詳しくは書けないんですが、ぜひ最後まで読んで文季のめんどくささ、そしてかっこよさを目の当たりにしてほしいです。
カエルが神様で、相撲中心に社会が成り立っている村、という舞台設定も面白かったです。
相撲を取るカエルを想像するとかわいいですね。ぴょこぴょこしてそう。カエルの体の構造も含めて相撲シーンを描いているところが、マニアックです。
今日日相撲中心の村とかおかしいだろ、と思いつつ、設定がしっかりしているので、「あるかもしれないな」と思わせるリアリティの塩梅がすばらしいです。
普通の相撲との取り組みの違いや、民俗学的立ち位置、歴史における相撲がストーリーの邪魔にならない程度に解説されているので、読んでいて興味深いです。
ライト文芸で「相撲」というテーマは珍しいけれど、ただの出オチで終わらせないところに作者の能力を感じました。
主人公の性格はちょっと評価が分かれるかもしれませんが、明るくてユーモラスで楽しい話なので、多くの人に読んでもらいたい作品です。
まとめ
賑やかで楽しくて、読んでいてわくわくした作品でした。カエルはかわいいし、相撲も面白い。
そして主人公、文季の決断が最高でした。これだけでご飯三杯いけるくらいにときめきました。
もっといろいろな人に読んでもらいたい本です。売れてくれるといいですね。