ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

黒人社会から見る多民族国家アメリカ―高山マミ『ブラック・カルチャー観察日記』感想

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

ブラック・カルチャー観察日記 (P‐Vine BOOKs)

今日の更新は、高山マミ『ブラック・カルチャー観察日記」です。

こちらの記事をきっかけに手に取りました。

uzumaki-guruguru.hatenablog.com

 

書籍概要

アメリカ出身の黒人と結婚し、彼らのコミュニティに飛び込んだ著者。そこにあったのは、数々のカルチャーショックだった。そこから見えてくる、アメリカの人種問題。日本人の知らない「多民族国家アメリカ」を知る一冊。

 

根強い差別、ステレオタイプ

そもそも「黒人」という言い方が差別的になりつつある昨今なのですが、この本では「黒人」という呼び方で統一されているのでそのまま使います。

 

アメリカで黒人が警官に撃ち殺されたとき、批判するのはいいとしてなぜ暴動まで発展するのかとずっと思っていたんですが、これは警察にはびこる人種差別にその原因があるようです。

著者の義弟が、マリファナを所持して逮捕されたことについて、著者はこう述べています。

 アメリカは不平等社会である。白人と黒人では待遇も処置もぜんぜん違う。

 白人の子たちは同じようにマリファナを吸っても大ごとにならない。少量所持なら警察も見逃す。

(P207)

こういう風に露骨に差別をされるのであれば、そりゃあめちゃくちゃキレるよな……。

黒人は確かに犯罪率が高く、20~34歳の黒人の男性は9人に1人が刑務所に入っているのですが、周りがそうされている部分もかなり大きいのでしょう。

犯罪率が増える→警官に差別される→真面目に生きるのあほらしくなる→犯罪率が増える、という悪循環に陥ってますね。

 

もうひとつ印象的だったのが、アメリカはかなりはっきり人種の線引きを引いていることです。

それが差別か、というと必ずしもそうは言えないんですよね。立場的に弱い人たちを守るには、「ここからここまでが身内」という囲いはどうしても必要になります。

たとえ善意であっても、その境界線は簡単に飛び越えてはいけない。わかり合いたいと思っても、仲良くもないのにデリケートな問題に触れてはならない。

多民族国家っていうのは「みんな仲良く」っていう世界ではないことに気づきました。

 

黒人社会について辛辣に話しているところもありますが、コミュニティに飛び込んで、自ら身内となったからこそ言えることだろうなと思います。私みたいな赤の他人がこれ言ったら怒られるでしょう。

そういう「身内感」も含めて興味深かったです。

 

まとめ

すごく面白かったです。アメリカの社会や、人種差別について興味がある人にはおすすめです。

 これから日本にたくさん外国人が入ってくると思うので、今から「異文化」について勉強しておくのもいいかもしれません。

ブラック・カルチャー観察日記 (P‐Vine BOOKs)

ブラック・カルチャー観察日記 (P‐Vine BOOKs)