ブックワームのひとりごと

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「詩人」であることがスティグマとして扱われるのが辛すぎ―紅玉いづき『現代詩人探偵』感想

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現代詩人探偵 (創元推理文庫)

今日の更新は、紅玉いづき『現代詩人探偵』です。

 

あらすじ

オフ会で「10年後に会おう」と言って別れた詩人たち。10年後、彼らが集まってみると、四人もの詩人が亡くなっていた。その詩から「探偵くん」とあだ名される主人公は、彼らの死の理由を探り始める。

 

書きたいものがあることは不幸せなのか?

ミステリと銘打ってはいるけれども、あまりドラマチックな謎解き要素は期待しないほうがいいと思います。この作品で問われているのは「動機」。自殺に至るまでの心の動きなので。

主人公である「探偵くん」が詩人たちの死をたどり、打ちのめされては、自分のことを振り返る……という筋書きは、暗いけれどもよかったです。どこまでも内省的なので好みは分かれるだろうけれど、こういう同じことばかりうじうじして考えてしまう時期があったので共感しました。

 

しかし、正直な話をすると、私この作品嫌いです。嫌いというよりショックなのが近いかな。

この作品の死者たちは、「詩人でなければ死ななかっただろう」というキャラクターばかりで、それがとても堪えたのでした。

確かに、私も含めて身の回りで何か書いている人たちは、訳ありだったり生きづらさを抱えていたりする。けれど、それを前面に押し出されるのはとてもつらい。

「ものを書きたい、言葉をつむぎたい」という思いを、スティグマのように扱われたくなかったです。

こんな思いをするのは、私が何年も何かを書き続けた人間だからだろうと思いますが。他人事として楽しめないんだよなあ……。

一方で、その、「スティグマ」の描き方の完成度が高いのも事実で、何だか悔しかったです。この悔しさは、「探偵くん」と同じように、書くことでしか答えを返せないのだろうなと思いました。

 

まとめ

ストーリーとしては面白かったんですが、とてもつらかった。二度と読み返さないと思います。

 私が文章にこだわりのある人間だからこういう感想を持つのであって、それ以外の人には適当に流せる要素だと思います……。

現代詩人探偵 (創元推理文庫)

現代詩人探偵 (創元推理文庫)