ブックワームのひとりごと

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ウェットな感情が飛び交う短編集―TAGRO『DON'T TRUST OVER 30』

DON’T TRUST OVER 30(1) (星海社コミックス)

今日の更新は、TAGRO『DON'T TRUST OVER 30』です。

一巻完結のまんがを読むシリーズ。

 

あらすじ

漫画家として生活している男は、恋人に結婚したいと言われる。彼には父親への葛藤があった。ままならない大人たちの短編集。

 

ウェットで観察眼に優れた短編集

全体的にウェットで、さまざまな感情に満ちている作品です。

どちらかというと暗い話が多いのですが、暗いだけではなく、その中にある思考を丁寧に描いています。

不快になるレベルの、生々しい感情があるけれども、読むのをやめられない魅力がありました。それは描写の的確さと、リアルでありながらどこか突き放した観察眼があるからだと思います。

絵柄は話によってがらっと変わります。序盤は等身の低い絵柄で、後半は高めになっています。雰囲気によって絵柄を変えるタイプの作家なんですかね。

 

表題作「DON'T TRUST OVER 30」と、その続編にあたる「SON HAS DIED,FATHER CAN BE BORN」が一番好きでした。

親を好きになれない子どもが、それでも大人になっていく話です。父親に似ていく自分におびえ、やるべきことから目をそらしながら、少しずつ変わっていきます。

明るい話とは言えないですが、きれいごとを言わず、それでいて少し希望のある終わり方にしているところが好感を持てました。

 

「Limbo」は訳ありの女性を拾ったライターの話。

「どうなるんだ?」という予想のつかない展開にハラハラしました。

そしてオチが最高にずるい。ぜひネタバレなしで読んでほしいです。

 

「The world is full of angry young men.」は、人々の精神年齢が成熟しなくなった世界の話。そこで「順当に」成長している少女と、成長しない女性の話です。

内容としてなかなかブラック。現実世界の人間も、あまり人のこと言えないですね。

かわいらしい少女たちの交流と、どうにもならない現実の対比がなんともえぐいです。これはこれで闇ですね。

 

まとめ

楽しい話ではないんですが、それでも面白かったです。

暗い話の中に、少し希望だったり美しさだったりがあって、そのバランス感覚が好きでした。