今日の更新は、あおのなち『あの子に優しい世界がいい』です。
あらすじ・書籍概要
アンドロイドのアンは、主人に煙たがれている。アンは主人の心を知りたいと望むが……。アンドロイドと人間、学校の友達、魔法使いのふたりなど、同性同士も異性同士も含む「恋愛」を描いた短編集。
説明されないところが楽しい
表紙では想像がつかなかったけれど、男女も男男も女女もごったまぜの短編集なんですね。
基本男女が好きなのであまり同性愛ものは読まないんですが、これは面白かったです。
感情の描写が多いけれど、それそものに酔ったところを感じなかったからかな? 主観的でどろどろしている一方で、洗練されています。
言葉で説明されていない部分があり、ちょっと一読ではわかりづらいシーンも多かったですが、そこを深く読み込んでいくのが楽しかったです。
個人的に好きなのはふたつ。
「ふたりで明けて」は漫画を描いている少年と、その彼の友達の話。途中まで「あれ、どうなってるの?」と思いますが、最後まで読むとなるほどと思います。
こういう現実と想像が交わるストーリーは好みですね。
好きなのに、好きと言う勇気がなくて、何度もあの頃の恋を反芻してしまう。そんな青春のせつなさが表れている作品でした。
もうひとつは「彼女の破片」。しっかりもので面倒見のいい千束(ちさと)と彼女にべったりなあいこ。そしてそれを眺める幼馴染の少年倉田。
傍観者でありながら、少し干渉せずにはいられない倉田。でも結局ふたりのことはどうにもならないんですよね。奇妙なバランスで成り立っている依存関係は、彼女らが望む限り続きます。
すでに行き詰りつつある彼女らの関係。それを打破したくてたまらないのに、傍観者としての倉田は無力です。だからこそ「百合」なのかもしれません。
まとめ
すごく好みの恋愛漫画でした。機会があったら他の作品も読んでみたいです。
紹介した二編は業が深くて幸せな話ではないですが、だからこそキャラクターの心情に沈み込みたくなりました。
女の子の話はこちらをどうぞ。
「運命の女の子」をいろいろな側面から描いた短編集です。