ブックワームのひとりごと

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食欲のあるロボットの苦しみ―清水玲子『22XX』

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22XX (花とゆめCOMICS)

今日の更新は、清水玲子『22XX』です。

昔読んで久しぶりに読み返したくなりました。

 

あらすじ

ある星に賞金稼ぎにやってきたロボットのジャック。そこで出会ったのは、人食い種族の少女だった。求婚されたという勘違いから、彼女はジャックの子どもをつくろうとする。しかしジャックはロボット。どうあがいても子どもはできないのだが……。

 

食べる人と食べたくないロボットと

ジャックは人間を限りなく再現したロボット。食欲もあります。しかし食べたものは栄養にならず、廃棄されてしまいます。

ジャックは自分のことを人間だと思っていたころ、餓死で仲間を失いました。閉じ込められて持っていた食料を折半しているうちに、ロボットである自分だけ生き残ってしまったのです。

ジャックは「食べること」に対して強い罪悪感を持っており、食欲を失うことを望みます。

そんなジャックの前に現れたのが、人食い種族のルビィ。彼女にとって食べることは非常に神聖なこと。このふたりの対比が、作品の主軸です。

 

食べることに嫌悪感と罪悪感を持つジャックを見ているとこっちまでつらかったです。そんなジャックが、食べることで相手の生を取り込み引き受けていくルビィにあこがれというか、うらやましさというか、淡い恋のような感情を抱いていくのがよかったです。

ジャックが食欲を持つロボットでなければ、この関係は結ばれなかったと思います。結局のところジャックは父親にもなれないし食料にもなれない。だからこそ、ルビィがうらやましかったんだと思います。

しかしジャックは賞金稼ぎ。ふたりの生活は、長くは続かない運命でした。

 

「食べること」とは何か、というテーマを、宗教的ともいえる視点から描き出していくSF漫画でした。やっぱり読み返しても面白かったです。

昔のSFなので古いところもありますが、それを踏まえてもやっぱり好きです。

 

まとめ

久しぶりに読んでも面白かったです。新刊では入手困難なのが残念。

電子化もされるといいですね。

 

 

22XX (白泉社文庫)

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22XX (花とゆめCOMICS)

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