今日の更新は、あおのなち『あなたの世界で終わりたい』です。
前に読んだ同作者の短編集が面白かったので、こちらも買ってみました。
あらすじ・書籍概要
血を嫌う吸血鬼と、学校でいじめられている女子高生。女子高生は吸血鬼に、「あなたに食べられてもいい」と言うが……表題作ほか、いろいろな「ふたり」を描いた短編集。
読者の読解力が試されている
『あの子に優しい世界がいい』と同じく、よく考えないとわからないオチが多いです。しかしこの読み終わった後に「つまりどういうことだったんだ」と考え込むのが結構楽しいです。
この作品で一番好きなのは表題作でもある「貴女の世界で終わりたい」ですね!
吸血鬼なのに血を厭う男田村と、いじめられているの女子高生芙由(ふゆ)が部屋の中で会話する、という狭苦しい話です。
田村が芙由を慰めて終わるのかなあ、と思いましたが、物語が後半に差し掛かったころ、ある事実が明かされ、見方がぐるっと変わりました。
田村が「人を食う化物」として芙由の背中を押したシーンは、悲しいけれどいとおしかったです。
かなり難解なストーリーで、一読ではわかりにくいんですが、そこも含めてよかったです。読み返したいという動機になりました。
あと「Goodbye my god」もよかったです。
クラス委員の少女が不登校の男子の家に行くと、そこには羽の生えた少年がいて……というお話。
これは寓話的な話で、自分の弱さを認めた瞬間、異形ではなくなる、ということなのかなと解釈しました。
幻想的でもの悲しくて、それでも希望のある素敵な短編でした。これからも彼らは痛みを抱えながらあがくんでしょうね。
全体的に読解力が要求される短編集でした。読者が試されている。
よくわからなくてもよくわからないなりに「こうかな?」考察して楽しめる作品でした。
まとめ
暗い話が多いし作風が独特なので万人にはお勧めしがたいですが、好きな人は好きだと思います。私は好き。
ちょっと歯ごたえのあるような作品が好きな人には推したいです。
前に読んだ同作者の短編集はこちら。