あらすじ
ロタとカンバルに同盟を結ばせるため、チャグムとバルサはカンバル王国に入る。チャグムはカンバル王との面会を望むが、密偵抜きで彼と会うことは難しい。バルサはある計画を考えるのだが……。
戦争を引き受ける皇太子
チャグムが見つかり、久しぶりにバルサとチャグムが一緒に旅をする巻。状況は切迫しているのですが、このふたりのやりとりに懐かしさを感じます。
1巻『精霊の守り人』を思い出す一方で、チャグムが皇太子としてめきめき成長していくのに時間経過を感じます。盛りを過ぎて少しずつ老い始めているバルサとは対照的ですね。
こういう「過ぎ去っていった時間」を意識させるのが上手いなあと感心しました。
ラストで戦争を引き受け、「自分の行動が人を殺すかもしれない」と自覚したチャグム。優しすぎるほど優しかった彼が、為政者の罪を背負うことを決意してしまいました。それは頼もしいと同時に、少し悲しいです。おそらく、バルサも同じような考えなのでしょう。
帝である父親に疎まれていたチャグムは、新ヨゴを救う義理なんてありません。それでも祖国を助けたいと思う一心には心を打たれました。
それでもチャグムを引き留めず、彼のやりたいことをやらせてあげるバルサはかっこいいです。大人としての自覚がありますよね。
あと本筋には関係のないところなんですけれど、チャグムはヤギの乳製品が苦手、という描写が好きでした。確かに食べなれていないものはつらいですよね。くせがあるし。そして新ヨゴとカンバルの文化の差が表れている設定でもあります。
こういう何気ない細かい設定で、文化差を表すの大好きです。
まとめ
もうバルサのようにチャグムを心配してしまう勢いだけれど、読者としてはただ見守るしかないですね。
最終巻が楽しみです。