今日の更新は、宮内悠介『スペース金融道』です。
あらすじ・書籍概要
宇宙の取り立て屋ユーセフと「ぼく」。上司のユーセフにしごかれながらぼくは借金を取り立てる。植物、アンドロイド、人工生命と、さまざまな知性体からお金をうけとろうと奔走するが……。
仲の悪いバディ最高
バディがめちゃくちゃ仲悪くて面白かったです。どうでもいいことで「ぼく」をぶん殴るユーセフと、虐げられているようで意外としたたかな「ぼく」。別に仲の良くないふたりが仕事のために修羅場をくぐる、この距離感が好きでした。
このところ仲良しのバディを読むことが多かったので新鮮でした。
この作品はタイトル通り『ナニワ金融道』のパロディだと思われます。「借金を取り立てるためならどんなこともする」「金融を通して世界のしくみがわかる」というテーマを踏まえると、かなり的確なパロディだと思いました。
私、きっちりテーマを踏襲しているパロディやオマージュ大好き。その点で『スペース金融道』は最高でした。
金融SFなので、金融理論がいろいろ並べ立てられています。しかし主人公である「ぼく」がいまいちわかっていないので、読者がわからなくてもまあいいかと思えてきます。その点、初心者向けのSFではないでしょうか。
個人的に好きだったのは「スペース珊瑚礁」ですね。ミトコンドリア病になった「ぼく」が謎の知性体に取り憑かれる話です。ザックとちょっと友情を結んでいるところにほのぼのしつつ笑えてしまいました。
設定はがっちりしており、登場人物たちが修羅場をくぐっているけれど、独特のゆるさとポップさでなんだか気が抜けてしまいます。
いい意味で力を抜いて読める作品でした。
まとめ
ハードでありつつゆるくて面白かったです。徹頭徹尾楽しく読めました。
一巻で終わっているのが少しもったいないくらいです。

NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)
- 作者: 宮部みゆき,月村了衛,藤井太洋,宮内悠介,野崎まど,酉島伝法,長谷敏司,円城塔,大森望
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/10/07
- メディア: 文庫
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