今日の更新は、荻原規子『薄紅天女』再読感想です。
あらすじ・書籍概要
坂東に暮らす阿高と藤太。蝦夷との戦いが続く中、阿高は己に蝦夷の血が流れていることを知る。姿を消した阿高を追って、藤太は坂上田村麻呂とともに旅立つ。一方皇女である苑上(そのえ)は、物の怪に悩まされる都を見て何かしたいと、男装をして飛び出した。
神話の時代から人の歴史の時代へ
今までの勾玉シリーズと違って、皇統の支配がガチガチになり、その分キャラクターの自由も少なくなっている気がします。
神話の時代から遠く離れ、人の歴史が続いている世界で、神話的な力を手にするとどうなるのか……という話。不思議な能力が、神の力ではなく物の怪の力になっていることに時の流れを感じます。
この巻は蝦夷を完全な被害者として書かないところがいいですよね。だからといって朝廷がやったことが許されるわけではないけれど。
読み返してちょっと不思議だったのが蝦夷も闇の大御神と輝の大御神の神話を知っていることです。外国並みに文化が違うのになぜ? と思ってしまった。話の都合と言えばそこまでなんですが。外国の概念がある世界観だと神話の話をするのが難しいですね。
仲成こと薬子のヤバい女っぷりもよかったです。一見しっかりした男装の麗人なんですが、話を進めるにつれある人物に対しての狂信っぷりがあらわになります。悪役的なポジションなんですが、その一途さはどこか憎めなかったです。
そして天然っぽい阿高が苑上に最後にやったあのシーン。
かなり後半まで苑上のことを男だと思っていたのに、ラストシーンのあの阿高はだいぶずるいですよね。最高。
勾玉三部作の今までのヒロインはどこか危なっかしいけれど、苑上はどこに行っても大丈夫そうなので、安心感があります。たくましく生きていってほしい。
まとめ
久しぶりに読むと新鮮でした。神話の時代から人間の歴史への移り変わりが印象的でしたね。
また忘れたころに読み返したい作品です。