期間限定無料と聞いてワールドトリガーを読んでいました。面白かった。
実は5巻までは読んでたんだけど、そのときぴんとこなくて途中まででやめてしまったんですよね。
これは要するに戦記漫画なんだと気づいてから面白くなってきたので、その感想です。
『ワールドトリガー』のあらすじ
異次元からの侵略者「近界民」の脅威にさらされている三門市。そこに住む少し正義感の強い中学生・三雲修は、謎の転校生・空閑遊真と出会う。遊真の行動に振り回される修の運命は!? 最新型SFアクション!!
(ジャンプ公式HPより)
ざっくり要約すると、異世界から謎の侵略者が来るので少年少女が戦うよ、という話。
特徴的なのはトリガーという道具で、これを使うとトリオン体という分身のようなものに身をやつすことができます。トリオン体がいくら傷ついても本体には傷は尽きません。ただしトリオン切れを起こしたり、トリオン体が大きく損壊した場合は戦闘不能になり緊急脱出(ベイルアウト)することになります。
ワールドトリガーの主人公4人
空閑遊真(くが・ゆうま)
異世界から来た近界民(ネイバー)。訳あってボーダーに協力。
豊富な戦闘経験と多目的トリオン兵「レプリカ」を使ってチート級の能力を発揮するが、だいたい相手もチートなので無双ができません。
三雲修(みくも・しゅう)
見た目通りの真面目なメガネです。めっちゃ弱い。9巻になった今でも純粋な能力としては弱いまま。ただ彼のようなキャラクターがどれだけ敵の足を引っ張り、全体の勝利に貢献するかが『ワートリ』の重要なテーマです。
雨取千佳(あまとり・ちか)
怪獣級のトリオン量を誇るスナイパー少女。その能力は味方に多大な戦力をもたらしますが、同時に敵に狙われもします。
迅悠一(じん・ゆういち)
所属チームを持たない特殊なボーダー隊員。
未来が見えるサイドエフェクト(特殊能力のようなもの)を持ち、腕っぷしもA級とチートな属性ですが、彼自身も駒のひとつにすぎずやっぱり無双はできません。
ワールドトリガーが戦記漫画な理由3つ
人格より能力が優先される
『ワールドトリガー』の登場人物は、人格がどうという問題以前に「兵隊」としての在り方を求められています。
単純に努力したからとか、思いが強いからとか、心理的な面は評価されません。もちろん心理的な面がきっかけになることはあるけれど、評価されるのはあくまで結果に対する貢献度。頑張ったとしても負けは負けというシビアな世界はまさに「戦争」です。
これ、SFファンタジーだからこそそういう描写ができるんですよね。現実に近い世界観だったら生々しすぎて受け入れられなかったと思います。
全体を勝たせる負けは負けではない
さきほど「頑張ったとしても負けは負け」という話をしたんですが、『ワートリ』は同時に「負けたとしても全体の勝利に貢献できる負けであれば負けではない」という価値観も維持しています。
近界民と対峙しボロボロに負けたとしても、次に戦う味方の情報源になれさえすればその行動には意味があるのです。
戦争を行うには何より「情報」が大事だと全員わかっているんですよね。そこが最高にしびれます。
弱い駒が強い敵の足を引っ張る
ワートリで重要な戦法として登場するのが「弱い駒が強い敵の足を引っ張る」というもの。
主人公のひとり、三雲修がその象徴的なキャラクターです。彼はとにかく弱いのですが、機転とガッツで強敵の間を縫うように立ち回り、勝利に貢献します。
だからこそ少年向けの作品では否定されがちな「数の暴力」が『ワートリ』では肯定されます。ただやみくもに数だけが多くてもだめですが、戦術のひとつとしてちゃんとあります。
弱い駒が弱い駒なりに意味のある立ち回りをし、仕事をして緊急脱出して去っていく。その「意味」に燃えるんですよね。
『ワールドトリガー』の「戦争もの」を生々しくさせない工夫
ここまでシビアで実力主義な世界観を描きながら、『ワートリ』には生々しさがなく、ちゃんとエンタメとして成り立っています。それは、戦争のグロデスクな部分をできるだけ排しているからでしょう。
フィクションで戦争を書こうと思うと、人が死ぬ以上どうしても悲惨さとかやりきれなさを書く必要があります。
ところが『ワートリ』は緊急脱出によってそう簡単に人が死なないし、敵側も命がけで作り出す強力なトリガー「黒トリガー」の存在があるため、簡単にボーダー隊員を殺せないのです。
それによって『ワートリ』は壮絶な集団VS集団の戦いをしておきながら、死亡者が非常に少ないという作品になっていました。(少しは死ぬキャラもいる)
そしてキャラクターたちが余計な喧嘩をしないところも生々しさの軽減に役立っています。対立はあるけれど、それぞれちゃんと考えあってのことです。そして喧嘩をしていてもやるべきことはきっちりやってくれます。
このように、『ワートリ』は生々しさを減らす工夫が随所に凝らされています。読者に戦記ものを生々しさなしで読ませてしまう、その実力に脱帽しました。
まとめ
『ワートリ』の中の世界観や価値観をつかむまでは難しい話なんですが、ぴたっとハマれば面白くなってくる作品です。この機会に読めてよかったです。
とりあえず、今度レンタルコミックで続きを借りてきますね!