今日の更新は、ハラハラドキドキする小説のおすすめです。
アクセス解析の検索ワードに浮上していたので書いてみました。ジャンルはホラー・ファンタジー・SF・サスペンスと雑多に混ぜています。
- 変態コレクターの庭でサヴァイヴする少女たち『蝶のいた庭』
- 少年少女が謎の生物と戦う『アンゲルゼ』
- 少女が七変化して大陸を駆け抜ける『流血女神伝』
- 記憶と幻覚のサスペンス『キミとは致命的なズレがある』
- 鬱とコメディの差が激しい『シュピーゲルシリーズ』
- テンポよく権謀術数が行われる『わたしはさくら。~捏造恋愛バラエティ、収録中』
- 女用心棒が大冒険 『守り人シリーズ』
- クラスからいじめに遭う少年 『死にぞこないの青』
- 死体の一人称小説『夏と花火と私の死体』
- 閉鎖的な田舎に吸血鬼がやってきた!『屍鬼』
- 逃亡する少年の二転三転するストーリー『おはよう、愚か者。おやすみ、ボクの世界』
- 自殺した少年の真実に迫る『ただ、それだけでよかったんです』
- 都市伝説がはびこるもうひとつの世界 『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』
- 時系列の混乱の中を読む『リライト』
- 恐怖の論理的幽霊退治ミステリ『ゴーストハント』
- 交霊会をテーマにしたホラー『霊感少女は箱の中』
- 増殖する横浜駅の中で大冒険『横浜駅SF』
- スチームパンク+バイオ技術の世界でボーイミーツガール『リヴァイアサン三部作』
- 人がロボットに見える少女の真実とは『紫色のクオリア』
- 後宮の少女が国を作る『あとは野となれ大和撫子』
- 好いた男を救うために奔走する少女『紙の魔術師三部作』
変態コレクターの庭でサヴァイヴする少女たち『蝶のいた庭』
背中に蝶の入れ墨を入れた少女たちが保護された。そのひとりであるマヤという少女は、警察に事情を聴かれるが、巧みな話術で何度も警察官たちをけむに巻く。根気強く彼女の語りを聞く中で、おぞましい庭園の姿が浮かび上がってくる。
背中に蝶の羽が描かれた少女たちが暮らす、美しい庭園。ガラスケースに並べられた彼女らの「標本」。ひたすら若さを消費する、耽美な世界。
一方で、21歳になると必ず殺される蝶たちの「死への恐怖」は生々しく真に迫っていて、これが美しいだけの話ではないとしっかり示してくれます。美しさに浸ることを肯定していない、耽美の概念を打ち破っている話でした。
少年少女が謎の生物と戦う『アンゲルゼ』
内気で引っ込み思案な陽菜の趣味は、歌を歌うこと。歌を歌うと不思議な女性が現れ、彼女をマリアと名付け交流していた。しかしマリアは、陽菜の運命を変える存在だった。
中学生の女の子が、半分化物になり、軍隊に所属して鬼のような訓練を受け、出征する。これだけでつらさが十分すぎます。
しかし主人公陽菜にはさらなる試練が待ち受けています。もう十分だよ!
話を転がしていくのが上手くて、中だるみするところがありません。だから一気に読んでしまいます。
少女が七変化して大陸を駆け抜ける『流血女神伝』
猟師の娘カリエは、エディアルドという男にさらわれ、外見が似ている王子の身代わりにされる。突然のことに反発するカリエ。しかし、それはカリエの冒険の始まりに過ぎなかった。
主人公カリエが育ったルトヴィアをはじめ、さまざまな勢力が交錯し、今日敵だった相手が明日仲間になる、という複雑怪奇なストーリーです。
何が起こるか予測がつかないので、ページをめくる手が止まりません。読んでいて何回も何回もびっくりしました。
記憶と幻覚のサスペンス『キミとは致命的なズレがある』
海里克也(うみさと・かつや)は保健室で目を覚ました。事故で記憶を失ってしまった彼は、精神的不安定さを抱えている。幻覚と現実がごっちゃになり、混乱は進んでいく……。
読めば読むほど何が真実かわからなくなる作品です。読んでいるうちに私も不安になりました。そして最終的に明かされたオチにはぞっとしました。こんなことってある!?
タイトルをいろいろな意味で回収しているエンディングは必見です。
鬱とコメディの差が激しい『シュピーゲルシリーズ』
もともとはウィーンと呼ばれていたオーストリアのミリオポリス。そこでは機械化された少女たちが治安維持のために戦っていた。少女たちは、ぼろぼろになりながらも世界を揺るがす陰謀に立ち向かう。
鬱展開とコメディの差が激しい疾走感のあるストーリー。同時に緊迫する国際情勢を背に戦う女の子たちがしんどいです。みんな幸せになってくれ、と思うことしきり。
何度も地獄を味わう作品ですが、それでも希望を失わない前向きな作品でもあります。
テンポよく権謀術数が行われる『わたしはさくら。~捏造恋愛バラエティ、収録中』
女優を目指してモデルやグラビアの仕事をする桜子。彼女はお見合い番組のサクラ役を持ちかけられる。しかし、そこにはほかのサクラもいるらしく……。お見合い番組を舞台に権謀術数が渦巻くミステリー。
話のテンポがよく、どんどん新情報が出てくるので物語として中だるみするところがなかったです。 誰が本当のことを言っていて、誰が嘘をついているのか。主人公の桜子と一緒に悩みました。
そしてその権謀術数と裏腹に、読後感はさわやかです。純粋に読んでよかったと思える作品です。
女用心棒が大冒険 『守り人シリーズ』
カンバル王国出身の女用心棒、バルサ。彼女が訳アリの人々を助け守りながら、諸国を旅し、その国の秘密を知っていく冒険譚。
女性でありながらハードな戦いを繰り返すバルサ。いつも綱渡りのバトルシーンは読んでいてすごくはらはらします。
ストーリーそのものも、国の陰謀やもうひとつの世界、ナユグが関わっており、一筋縄ではいかない予測のつかなさがあります。
クラスからいじめに遭う少年 『死にぞこないの青』
担任の羽田先生から嫌われ、教師からのいじめにあうようになったマサオ。クラスメイトまでもそれに便乗する。そんな中、マサオの前に死にぞこないの男の子が現れた。
いじめのシーンが大変心に痛い作品。そんな中、不思議な男の子が登場し、彼は味方なのか、敵なのかどきどきすることになります。
ラストの展開は手に汗握る内容で、緊張しっぱなしでした。終わったときの安心感は印象的でした。
死体の一人称小説『夏と花火と私の死体』
夏休み、少女に殺された少女。彼女は兄と一緒に死体を隠す。ふたりが罪から逃れるためのあれこれを、死体の一人称で描く表題作ほか、短編二本立て。
死体の一人称、という小説でしかできない表現がダークで幻想的です。あまりに冒涜的でこんなものを読んでいいのか?という気分になります。
兄妹が何度もすんでのところで罪をかぶりそうになるところも怖いです。いや捕まってほしいはずなのにどきどきするのはなぜでしょう。
閉鎖的な田舎に吸血鬼がやってきた!『屍鬼』
閉鎖的な環境の外場村。そこでは奇妙な病気が流行っていた。謎の原因で人が死んでいく一方で、村ではおかしなことが起こり始めていた。それは引っ越してきた一家に関係があるらしい。
最初は淡々としていてどこがホラー? という感じですが、読み進めるうちに吸血鬼の惨禍が止まらなくなっていきます。
じわじわと恐怖が侵食し、取り返しのつかないところまで来てしまったあとで恐怖に突き落とされてしまう、その過程が面白いです。
逃亡する少年の二転三転するストーリー『おはよう、愚か者。おやすみ、ボクの世界』
高校生の大村音彦は、恐喝事件の疑いをかけられ、インターネットに情報を流される。追われる身となった彼は、「榎田陽人」という少女がこの騒動の鍵となっていることを知る。彼女は何者なのか……。
彼が逃げながら無実を証明する話……と思いきや、物語は二転三転し、思わぬ所へ転がっていきます。
いい意味で予想を裏切り続ける話なので、最後まで面白く読めました。露悪的なので好みは分かれると思いますが、私は結構好きです。
自殺した少年の真実に迫る『ただ、それだけでよかったんです』
クラスの人気者、昌也が自殺した。彼を自殺に追い込んだのは「僕」。そして弟の死の真実を追う姉は、主人公の行動に疑問を持つ。彼はどのようにして親友を殺したのか……。二つの視点から描かれる青春サスペンス。
この作品は、何より話の展開が面白かったです。ミスリードに次ぐミスリード、二転三転する主張、誰がどのようにして昌也を死に追いやったのか、なかなか読めない秀逸なストーリーでした。デビュー作とは思えない、話をぐいぐい引っ張っていく力を感じます。
都市伝説がはびこるもうひとつの世界 『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』
大学生の空魚(そらを)は、条件を満たすと入れる「裏世界」で鳥子と出会う。お金稼ぎになるとも言われ、裏世界に消えた友人を探す鳥子に、空魚は付き合わされることになるのだが……。
ポップな文体とは裏腹に内容は狂気と隣り合わせのホラー。怖いものが苦手な人はやめておきましょう。
明るいからっとした雰囲気と同時に、空魚と鳥子のピクニックには破滅的なところも感じさせます。ふたりが過去に抱える虚無と、異形になってしまった体に、から元気が乗っかっています。彼女らが破滅に向かわずに済むのか気になります。
時系列の混乱の中を読む『リライト』
1992年、未来から来た園田保彦に出会った「私」は、彼を助けるために10年後に飛ぶ。しかし実際の10年後、過去の「私」は現れなかった。少しずつ歪み始める時間の秘密は、彼女が書いた小説にあるようで……。
ストーリーそのものの時間軸があやふやで、読んでいるうちに不安になってきます。私自身も「ここ、どこ?」という気分になってきました。
徹頭徹尾混乱したまま読み終わりましたが、この読後感は結構好きです。ぜんぜん爽やかじゃないし、頭の上にはてなマークが飛び交っていますが、こういう終わり方もあっていいと思います。
恐怖の論理的幽霊退治ミステリ『ゴーストハント』
旧校舎には幽霊が出るという噂があった。麻衣はそこでゴーストハントをするという少年に出会う。除霊は他の霊能力者を巻き込み、謎を増していく。はたして旧校舎の幽霊の正体とは……。
この作品の特徴というのは、ホラー現象の解決が論理的に進められるところですね。実験や観察を繰り返して、真実に迫っていきます。超常現象を扱っていても、ミステリ要素が楽しめるのです。
果たして真実はどこにあるのか……その過程でめちゃくちゃ怖いシーンが乱発するので、ぐいぐい引き込まれていきます。
交霊会をテーマにしたホラー『霊感少女は箱の中』
幽霊事件により転校した主人公。彼女はクラスの地味なグループのチェーンメールのおまじないに巻き込まれる。彼女らは5000円で幽霊事件の解決をしている男子学生に相談するが……。
かわいいイラストとは裏腹に、かなりハードなホラーが展開されます。人と人とのネガティブな感情が行き交い、恐怖描写と相まって破滅へと進んでいきます。
すごく怖いので精神的に余裕があるときに読みましょう。
増殖する横浜駅の中で大冒険『横浜駅SF』
横浜駅が増殖し、日本を覆いつくした未来。横浜駅の外で育った三島ヒロトは、5日間だけ駅の内部(エキナカ)で過ごせる「18きっぷ」を手に入れ、42番出口を目指して旅立つ。ヒロトがエキナカで見た横浜駅の真実とは……。
あとがきによると、現実の横浜駅が延々と工事を繰り返していることにヒントを得てこの小説を書いたそうです。
トンチキな設定とは裏腹に、冒険SFとしてとても面白いです。異邦人であるヒロトが横浜駅の監視をかいくぐり真実に迫っていく姿がかっこいいですね。
スチームパンク+バイオ技術の世界でボーイミーツガール『リヴァイアサン三部作』
ヨーロッパが遺伝子組み換え技術を使う「ダーウィニスト」と機械技術を使う「クランカー」に二分されている世界。オーストリア大公の息子、アレックは両親が暗殺されたことにより、流浪の身になります。逃亡先で、男装の英国士官候補生デリンと出会い、友情を感じますが……。
スチームパンク+バイオ技術の世界というのがまずわくわくします。挿絵のある本なので、メカや合成獣の姿を想像しながら読みやすいです。挿絵の絵柄もとてもかっこよくて最高です。
主人公二人が体を張るシーンが多く、はらはらしながら読めるのが楽しいです。守られ主人公ではなくて、自分から行動するのが冒険譚らしくて好きです。
人がロボットに見える少女の真実とは『紫色のクオリア』
人がロボットに見える少女、ゆかり。その友人、学(まなぶ)はそれでもゆかりと仲良くしていたが、連続殺人事件をきっかけに、ゆかりの本当の力を知ってしまう。ゆかりが見ている世界とは……。
量子論やクオリアなどの壮大な題材を扱っていながらも、最終的には二人の関係に帰結するというミクロさが逆に好きです。
若干おどろおどろしい部分もあるので、ほのぼのを期待すると裏切られますが、その裏切られた部分すらよかったです。
後宮の少女が国を作る『あとは野となれ大和撫子』
アラルスタンの戦争で両親を失った日系少女、ナツキ。彼女は後宮(事実上の学校施設)に入り、そこで学んでいた。しかし現大統領が暗殺され、議員たちは逃げ出した。後宮の少女たちは自ら政権を取り、アラルスタンのかじ取りをしていく……。
架空の国を舞台にした政治もの。少女が政権を取るという普通ではありえないストーリーを、魅力あるキャラクターとわくわくする展開で描き出しています。
政権を担う少女たちは故国から逃げ出してきた訳ありの子たちばかりで、そんな彼女らがアラルスタンという未熟な国をなんとか立て直そうと紛争する姿は、見ていて応援したくなります。
好いた男を救うために奔走する少女『紙の魔術師三部作』
魔術がテクノロジーとして発達している世界。人気のない紙の魔術師になってしまったシオニーが、恋の相手であり自分の師匠でもある男を助けるために体を張るファンタジーシリーズ。
ヒロインシオニーが、セイン師に対してチョロいのは好みが分かれそうなんですが、正直優しいイケメンを目の前にしたらチョロくもなるだろうなと思います。
好きな人の感情に一喜一憂してしまうシオニーは乙女でかわいいし、それでも立ちあがり前に進んでいくところはかっこよかったです。
honkuimusi.hatenablog.com
以上です。興味がある本があればぜひ読んでみてください。