今日の更新は、荻原規子『西の善き魔女4 世界のかなたの森』です。
あらすじ・概要
南へ、竜退治に旅立ったユーシス。そしてフィリエルは、それをイグレインと追いかける。彼女が探すのは、行方をくらましたルーンの手がかりだった。フィリエルは自らの母親の姉、オーガスタ王女と出会い、そこでユニコーンの幼獣になつかれてしまったのだが……。
ルーンを追いかけるフィリエルがヤバい
南へやってきたユーシスとフィリエル。「竜退治」というロマンチックで西洋的な言葉とは裏腹に、雰囲気はどこかエキゾチックです。
そもそも新書ノベルス版では竜の挿絵があったので、「あ、この竜って……」と読者が気づくことができたんですが、文庫版のように挿絵がないとどうしてもイメージしにくいですね。気になる人はノベルス版を図書館で探してみてほしいです。
ここ、気付くと「ああああ!!」ってなるシーンなんですよ。
「暗殺犯を追っかける」というのはこの世界であってもヤバいことらしく、同行したイグレインからルーンをぼろくそに言われたりことあるごとに諫められたりするのがリアルでよかったです。作中の「普通」の倫理観がしっかり示されるのはわかりやすいし、それだけルーンを追いかけようとするフィリエルの我の強さが際立ちます。
冷静なようでいておかしいフィリエルにイグレインを添えるところは本当に正解だと思います。イグレインもちょっと変だけれど。
そしてフィリエルは長旅の果てにルーンと再会。ルーンは自分の生き方を曲げられない男なんだなあ、と再確認。めちゃくちゃ頑固で融通の利かない少年で、確かに周りの言う通り女を幸せにするタイプではありません。
でもルーンはフィリエルがいない世界では肩ひじ張って生きることができません。だから、それがルーンの愛なんでしょうね。
「きみはぼくが、研究第一だと思うかもしれないけれど、きみがいない世界というのは、謎を解くだけの価値もないんだよ」
(P315)
このせりふがすごく好きで、ここだけ何度も読み返してしまいます。ルーンのキャラクターをよく表した一文だと思います。
『西の善き魔女4 世界のかなたの森』まとめ
物語ががっつり動く巻で面白かったです。5巻がどんな話だったかよく覚えていないので、そういう意味でも楽しみです。
普通の女の子のようで作中の誰よりもぶっとんでいるフィリエル、好きになってしまいますね。