ブックワームのひとりごと

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ネットロアを泳ぎつつカルト教団とドンパチ―宮澤伊織『裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ』

裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ (ハヤカワ文庫JA)
今日の更新は、宮澤伊織『裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ』です。

あらすじ・概要

裏世界の探検を続ける空魚と鳥子。空魚の後輩、茜理(あかり)の友人の依頼を解決することになる。その過程で聞いたのは、「自己責任系」と呼ばれる怪談を語る「ウルミルナ」という配信者の存在だった。

ふたりでいれば「人らしく」いられる

追い詰められるとサイコパスのような非情を発揮する空魚が、鳥子と合流すると人間性を回復するのがエモーショナルです。
「誰かを助ける」ことに乗り気ではないのに、鳥子と一緒だけど助けてしまう。狂気が溢れる異世界に跳ぶ空魚と鳥子。ふたりとも歪んでいて、健全とは言えないけれど、人間らしさをかろうじて保っています。

◎ここからネタバレ◎

「ウルミルナ」を崇拝するカルト教団に連れ去られ、監禁された小桜と空魚。絶体絶命の危機に陥った空魚は、対カルトモードに豹変、鬼気迫る勢いで突破口を探します。
ミリタリー知識のある鳥子と比べて、お荷物感を醸し出しているときもあるけれど、こうして見ると全然お荷物じゃないですね。むしろ怖いですよ!
脱出を図る空魚と小桜のシーンは、サスペンス映画のような趣で盛り上がりました。そして汀が強すぎます……。どういう敬意でDS研に来たのか知りたいような知りたくないような。

ラストでついに冴月は小桜と鳥子に接触。読者の私はクリーチャーとしての冴月しか知らないので、なぜ彼女がここまでモテるのか全然わかりません。本当になぜなんだ。
元人間なのかすら疑わしくなってきました。
物語のかなめになっている人物の意図がわからない、というのは不穏でわくわくします。明かされるときが楽しみ。

一方で、百合を成立させるためにちょこちょこ強引な展開をしてくるところはやはり気になりますね。
前日譚にあたる「サンヌキさんとカラテカさん」で、登場人物の関係性を説明するためにだけ語られる長台詞には違和感がありました。あと、鳥子の「手」と空魚の「目」で解決するパターンがあまりにも多いので、通常の裏世界探索でハラハラしなくなってきてしまいました。
最後のVSカルトはとても楽しめましたが、そこに至るまでは少し強引で退屈でした。

序盤から中盤には不満があるけれど、最終的に面白くまとめてくれたのでつい許してしまいました。続きもこれから読むと思います。