今日の更新は、阿部智里『烏は主を選ばない』です。
無料公開で読んだ本。
あらすじ・概要
地方の宮烏の家に生まれた少年、雪哉は、若宮の側仕えとして宮中で働くことに。しかしそこは、陰謀が渦巻く場所だった。奔放に振る舞う若宮に振り回されながらも、雪哉は彼の賢く冷静な気質に惹かれていく。若宮を命を狙うのは、いったい誰なのだろうか……。
若宮と雪哉の関係性がすごくいい
若宮と雪哉の関係性がすごくいいですね。ぼんくらなふりをして実は賢い雪哉と、うつけのふりをしながらも実は思慮深い若宮。似たもの同士ですが、若宮のほうがとんでもない行動を連続して行っています。
雪哉のような「能ある鷹は爪を隠す」タイプのキャラってはたから見ていると「ちゃんと本気を出せ!」とキレたくなることがあります。でも雪哉は、自分以上に爪を隠している若宮に振り回されているのでイラつかないです。
しかしこの作品がファンタジーでよかったですね。現代が舞台だとパワハラでした。
正直完璧なストーリーではないんですが、読者をぐいぐい引っ張っていく力があるのでそんなに気になりません。「これからどうなるんだろう?」という気持ちがページをめくらせます。
◎ここからネタバレ◎
この作品は終わり方がすごくいいですね! 一年の約束を超えて自分に仕えることを求める若宮に「日嗣の御子を降りてくれ」と持ちかける雪哉。その彼なりの思いやりと忠誠心がよかったです。
その思いやりをわかっていて、雪哉に怒らない若宮も、やっぱり頭がいいな、と思いました。
普通なら陰謀を防いでハッピーエンドになりそうなところを、登場人物の価値観をしっかり示してオチとするところがかっこよかったです。
でも若宮側の内通者は予想通りでしたね。伏線を読んでいたわけではなく、「長束が密通者だったら面白いだろうな」と思っていたら実際そうでした。
私はメタな推理をしてしまうタイプだからこういう作品で驚くのには向いていないですね。
もう無料期間中に全部読むのは無理ですが、すごく楽しい本でした。またチャンスがあれば続きを読みたいです。