今日の更新は、冬川智子『マスタード・チョコレート』です。
あらすじ・概要
クラスになじめず、いつもひとりだったつぐみ。彼女は美術大学を目指す予備校に入学したことをきっかけに、少しずつ変わり始める。予備校の先生、同性の友達、そして、気になる男の子。彼らと関わるうちに、つぐみは新しい感情を覚えていくのだが……。
こんな人におすすめ
- 孤独なキャラクターが友達を作る話が好きな人
- 心理描写を楽しみたい人
- 悪意のない話が好きな人
丁寧な心理描写が美しかった
独特の絵柄に惹かれて手に取った漫画です。
ケータイやスマホでの閲覧を前提にしていた漫画らしく、コマの大きさがすべて同じです。コマをひとつずつめくって読む漫画だったようです。
予備校講師と予備校生の恋という若干倫理的にどうなのという要素もあるものの、心理描写や空気感が丁寧なので、「ちっ、しょうがねえな……」と許してしまいました。
誰かが誰かを「いいな、素敵だな」と思う瞬間の何気ないしぐさ、言動が美しく描かれています。
淡々としていて、ドラマチックな演出のない作品ですが、だからこそじっくりキャラクターの心を考えながら読めました。
メインキャラクターに悪意のある人間はおらず、ときにすれ違うことがあっても優しい空気で進んでいきます。穏やかな気持ちになりたいときにはいいかも。
◎ここからネタバレ◎
つぐみをめぐる恋は、同じ予備校生の浅野、予備校の先生の矢口のふたつあります。それでいて、両手に花のような展開ではありません。物理的な距離が離れてどう交流するか悩んだり、逆に近づいて困惑したり。そういう関係の距離が近づいたり離れたりする描写がリアルでした。
個人的な趣味で言うと、つぐみと矢口先生の関係はプラトニックな淡い恋のまま終わってくれたほうがうれしかったです。でもそういう漫画でないことはわかります。私は、淡い恋が淡い恋のまま終わるのが大好きなので。
ただ性癖が不一致だったとしてもストーリーとしては楽しめました。恋と友情の青春物語としてはよかったです。