今日の更新は、高田カヤ『カルト村で生まれました』です。
あらすじ・概要
幼少期から思春期を「カルト村」で過ごした著者。そこは農業をベースとした共同体だった。子どもなのに強制労働、振るわれる体罰、理不尽なルール。その中でも子どもたちは案外たくましく、強く過ごしているようで……。奇妙な子ども時代を描いた自伝的コミックエッセイ。
こんな人におすすめ
- カルトに興味がある人
- 異文化に興味がある人
- 自分とは違う価値観を「面白い」と思える人
トラウマを感じていない著者にカルチャーショック
まず著者が、カルトに対して「世話役が厳しくて腹が立った」「労働がつらかった」と思うところはあれ、深刻に理不尽に対して傷ついている様子がないんですよね。そこが一番のカルチャーショックでした。
おそらく彼女にとって、カルト村で生活していたことが過ぎ去ったことであり、自分の中で消化できてしまっているのでしょう。正直私はもっと周りの大人を恨んでいいと思うんですが、これが本人なりの決着なら外部からあれこれ言えません。
いやあ、世の中には、いろんな人がいるんだなあ。月並みな感想ですけれども、「自分に理解できない世界」がこの世にたくさんあるのだと実感する本でした。
カルト村と言っても宗教的なカルトではなく、私有財産を極力減らし、農業をしながらみんなで助け合って生きていこうという村です。この「みんな一緒に」が曲者で、人と違うことをすれば怒られ、集団生活を乱せば怒られ、とにかくひとりの自由と言うものがありません。私がここに生まれなくてよかった……。
人権というものが何も考えられていないカルト村ですが、文化自体は興味深いです。農業中心に回っていく社会なので、何につけても農作業が優先。果物のなるころになると果樹の下でお弁当を食べ、デザートに果物を食べる。雪の積もった日には雪かきをしながら牛舎までたどり着く。
牧歌的で美しいとは思うんですが、人権はないからうらやましくはないですね……。現代より少しばかり前の話ですよ?
まあ、本当におかしな村なんですけれども、これが日本でなければ「そういうものなのかもしれない」と思えたのかも。なまじ日本でこんな場所があるから引いてしまうのでしょうね。
肯定はしたくないですが、日本の中にも理解できないものがあるということを知れたのはよかったです。