ブックワームのひとりごと

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実は多種多様だったニッポンの「結婚」―瀬川清子『婚姻覚書』

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婚姻覚書 (講談社学術文庫)

今日の更新は、瀬川清子『婚姻覚書』です。

 

あらすじ・概要

日本における結婚とは何か。著者は日本の各地から結婚に関する文化、習俗、風習を収集。男が娘の家に通うもの、娘が男の家に通うもの、嫁の一時的な里帰りや、かまど神との関係などなど。婚姻制度を通して、日本の女性観に迫った本。

 

こんな人におすすめ

  • 結婚制度に興味がある人
  • 女性のジェンダーに興味がある人
  • 昔の文化に興味がある人

 

「伝統的家族観」は伝統的ではない

読みやすくない上に多種多様な民俗学用語が頻発するので、読み切るのに苦労しました。しかしながら、頑張って読む価値のある本でした。

 

驚きなのは地方によって「婚姻」はまったく違う様相をしていたことです。

たとえば女性が稼ぎ手である海女の街ではとにかく腕のいい海女がモテまくり、家の階級より漁の腕が重視されていました。

また、女性が実家を離れず、男は外から通ってきて情を交わし、夫婦の家を持つことがない地域もありました。

きちんと中央の文化や法律が行き届く前は、その土地ごとにふさわしい結婚制度があったのです。

 

また、比較的自由恋愛が許されていた地域での、男女の恋模様が面白かったです。通い婚だと男が通ってこないと逆に親が心配したり、若者同士で共同生活をする中で婚活をしたり。想像するとほほえましい部分もあります。

 

著者の言うとおり、昔は昔なりに面倒なこと、偏見や差別があっただろうけれど、現代は本当に結婚の多様性が認められていない時代なのだと感じました。

 現代の「伝統的な家族観」と言われているものがいかに伝統的でないかよくわかる本です。

本物の「昔の家族」を見せてやるぜ! という気持ちでおすすめします。

婚姻覚書 (講談社学術文庫)

婚姻覚書 (講談社学術文庫)

  • 作者:瀬川 清子
  • 発売日: 2006/01/11
  • メディア: 文庫