今日の更新は、宮本福助『この度はご愁傷様です』です。
あらすじ・概要
放蕩者だった父が死んだ。葬式を終えた三きょうだいと孫、仁は、彼の残した家の片付けのために集まる。そこで見つかったビデオレターから、三人はダーツで遺産分配を決めることに。しかし、父の残したドタバタ劇はダーツだけではなかった。親の死をテーマにした連作短編。
こんな人におすすめ
- 気楽に読める漫画が読みたい人
- ユーモアが好きな人
- おじさん・おばさんに共感したい人
気楽だけれど引き締まったコメディ
気楽な気持ちで読めるコメディでした。父親の遺産を巡って大騒ぎして、最後はトホホな展開で終わるという繰り返しです。
コメディっぽく描かれてはいるけれど、三きょうだいのキャラクター設定ははどこかにいそうなリアリティがあります。それがまたおかしく、共感してしまいます。
「父親の死」というシリアスなテーマを扱いながらも、明るく楽しく、ちょっと優しい雰囲気で進行するところが面白かったです。それでいて、不謹慎にならない塩梅なのがすごいですね。
そんな笑えるタッチの作品なのですが、一方で、まともではない親を持った悲哀も描かれています。
父親の家に入り浸る老人たちに向かって、立ち退きを迫り、雪合戦でけんかをして負けたシーンでの一言がこれ。
「俺たちだって好きでオヤジを嫌ってたわけじゃない」
「親らしいこともしてもらえず」
「遺産ももらえず家ももらえず」
「満足な思い出もない……俺たちは一体なんなんだ……」
(P160)
面白おかしさの中で、親に対するわだかまりが、この作品を引き締めていました。