あらすじ・概要
小説の主人公に自分を重ね、本に耽溺する少女。空想と現実が混じる脳内で彼女は何を思うのか……表題作を含む三編を収録した短編集。
やりたいことはわかるが私向きではない
うーん、「作者のやりたいことはなんとなくわかるが私向きではない」という作品でした。
この短編集は展開がかなりゆっくりで、ひとつのシーンでコマをいくつも使い、せりふも細切れにしてあります。それがかったるく感じてしまいました。
しかしそれは、作者が下手だからそうしているのではなく「あえて」やっていることだと思うんですよね。
コマをいくつも使うのはキャラクターのしぐさを丁寧に見てもらいたいからだろうし、せりふが細切れなのも頭の中でコマを映像のようにイメージすればしっくりきます。
いわゆる「Not for me」の作品なのに、やりたいことがしっかりわかるから批判がしづらいです。むしろ私みたいな人間にも、「こう描きたい」というのがわかるということは、作者の実力は確かなものなんでしょうね。
でも表題作の、好きな小説を読んで現実と空想の境があいまいになる感じは覚えがあって面白かったです。あの地に足がつかない感じ、よく表されていました。