今日の更新は、女主人公がゴリゴリに活躍する小説おすすめです。
女主人公、乙女向けだと男キャラの添え物だし、男性向けだと「こんないい女を従えられる男がすごい」っていう文脈になりがちだよね、という不満がありました。そこで、女性がゴリゴリに活躍する作品でおすすめをまとめました。
男女ダブル主人公はややこしいので今回は除外しました。
『図南の翼』など、シリーズものでも単発で読める作品であれば取り上げました。
- 猟師の娘が歴史の荒波に投げ出される『流血女神伝』
- 12歳の少女が王になるために大冒険『図南の翼』
- 中央アジアの架空の国で少女が国を運営する『あとは野となれ大和撫子』
- 貴族の姫君が都の陰謀に立ち向かう『なんて素敵にジャパネスク』
- 少女が幼馴染を殺すために勾玉を集める『白鳥異伝』
- 少女が後宮で正妃になって戦う『後宮小説』
- 先端恐怖症の少女がフェンシングに挑戦『Let it BEE!』
- 不死身の女怪物の旅路『ビスケット・フランケンシュタイン』
- 惚れた男のために体を張るヒロイン 『紙の魔術師三部作』
- 女用心棒が国から国へ駆け巡る 『守り人シリーズ』
- 人見知り女性がたくましくなっていくやわらかSF『人類は衰退しました』
- レディースの女の子が覇道を目指す『製鉄天使』
- 知略の王女が王子を助ける 『花冠の王国の花嫌い姫』
- 「からゆきさん」大陸を駆ける『芙蓉千里』
- 属国の大公夫婦が宗主国の乗っ取りを目指す 『プリンセスハーツ』
- 女子大生がネットロアの世界を大冒険『裏世界ピクニック』
- 女の子を救うために女の子が時間を駆ける『紫色のクオリア』
猟師の娘が歴史の荒波に投げ出される『流血女神伝』
猟師の娘、カリエは、ある日男にさらわれ、病弱な王子の身代わりになることを強いられる。しかし、それはカリエの物語の始まりでしかなかった……。
王子の身代わり、後宮の女、小姓、海賊、修道女と、次々と身分を変えるカリエ。そしてどこへ行っても国家のごたごたに巻き込まれます。それは、カリエの身の上も関係しています。
常にハードモードなストーリーですが、カリエの不屈の精神に救われる作品でもあります。
12歳の少女が王になるために大冒険『図南の翼』
豪商の娘で、12歳の珠晶(しゅしょう)は、恭の王になるために蓬山に旅立つ。黄海に入る前に出会ったのは妖獣を捕らえる朱氏の頑丘(がんきゅう)。彼に護衛を依頼し、昇山を始める珠晶だったが……。十二国記の番外編だけれどこれだけで読めます。
世間知らずではありますが、頭の回転が速くロジカルな珠晶は本当に王の器。いい王になるのは確実。
その珠晶が王になろうとした理由いうのがまた、かっこいいんですよ。
中央アジアの架空の国で少女が国を運営する『あとは野となれ大和撫子』
アラルスタンの戦争で両親を失った日系少女、ナツキ。彼女は後宮(事実上の学校施設)に入り、そこで学んでいた。しかし現大統領が暗殺され、議員たちは逃げ出した。後宮の少女たちは自ら政権を取り、アラルスタンのかじ取りをしていく……。
政権を担う少女たちは故国から逃げ出してきた訳ありの子たちばかりで、そんな彼女らがアラルスタンという未熟な国をなんとか立て直そうと紛争する姿は、見ていて応援したくなります。
政治と戦争にまみれた世界で確かにある、少女たちのシスターフッド過激でどこか懐かしく、ほほえましくも悲しかったです。
貴族の姫君が都の陰謀に立ち向かう『なんて素敵にジャパネスク』
16歳の瑠璃姫は、貴族の女性としては適齢期を過ぎていた。しかし彼女は初恋の男性に操を立て、結婚を望んでいない。瑠璃姫が父親によって結婚させられそうになったとき、幼馴染の高彬(たかあきら)が助けてくれ……。
この時代、貴族の女性は他人に顔を見せず、引きこもって暮らすのがいいとされていましたが、主人公は積極的に活動し問題解決を主導します。そこが面白い。
キャラクターも個性豊かで、瑠璃姫の活躍っぷりを引き立ててくれています。
少女が幼馴染を殺すために勾玉を集める『白鳥異伝』
遠子は、双子のように育った小俱那とともに平和に暮らしていた。しかし小俱那が大蛇の剣の力を手に入れ、遠子の故郷を焼き滅ぼしてしまう。遠子は小俱那を殺すために、大蛇の剣に対抗する勾玉を求めて旅に出た。
女の子が幼馴染を殺すために旅に出る、というシュチュエーションは殺し愛が好きな身としてはめちゃくちゃ好きです。私の趣味をこじらせた原因のひとつです。
遠子は強くてかっこよくて、でも根本的にはひとりの男の子を愛した少女だというところがギャップがあって最高です。
少女が後宮で正妃になって戦う『後宮小説』
先帝が腹上死で崩御し、新たな後宮に銀河という娘が入宮する。好奇心旺盛な彼女は女大学で角先生に気に入られ、正妃となった。しかし王宮には賊軍が迫っており、銀河は王宮を守るため軍隊を指揮するはめに……。
下ネタが多いですが、雰囲気が明るいので、あまりいやらしく感じません。主人公の銀河も恥ずかしがることがないのでえげつないネタもさくさく読めてしまうんですよね。
女の子の成り上がり、そして戦争……というおかしくも壮大な話です。
先端恐怖症の少女がフェンシングに挑戦『Let it BEE!』
内気な少女、有星結恵は顧問の蜂谷巴に誘われ、廃部寸前のフェンシング部に入部。しかし彼女には、先端恐怖症という大きなハンデがあった。団体戦に出場するため、巴とフェンシング部のメンバーたちは結恵をフェンサー(フェンシング選手)に育て上げようとする。
初心者、結恵の成長を軸に、フェンシング部のメンバーの優しさ、フェンシングという競技の面白さ、そして心を震わせてくれるライバルとの出会いが、詰め込まれていて面白かったです。
多くの要素を破綻することなく描きこなした青春ストーリーです。
不死身の女怪物の旅路『ビスケット・フランケンシュタイン』
体の一部が謎の物質に置き換わる奇病が蔓延する世界。患部をつぎはぎにした人形は、自我に目覚めた。ビスケという名を得た怪物は、徐々に荒廃していく世界をさまよう。生まれてきた目的を求めて――。
創造主に愛されず、世界をさまようところ、「なぜ生まれてきたのか」を思い悩むところ、そして「人間性」を獲得するところは、もともとの『フランケンシュタイン』を踏襲していて面白かったです。
そして「女」であることを最大限生かしたエンドは最高でした。あの終わりだけでも読む価値があった。
惚れた男のために体を張るヒロイン 『紙の魔術師三部作』
魔法が高度な専門技術として発展しているロンドン。魔法は物質を操る力であった。主人公シオニーは人気のない紙の魔術師に弟子入りすることになる。最初は気乗りしなかったシオニーだが、徐々に師匠に惹かれていき……。
というのは序盤のあらすじで、本編はシオニーが愛した男である師匠を救うためひたすら奔走する話です。惚れた男のためになんでもする女の子は大好きだよ!
主人公が恋愛脳なのでそこは評価が分かれると思いますが、私は好きです。
女用心棒が国から国へ駆け巡る 『守り人シリーズ』
女用心棒、バルサは新ヨゴ皇国の皇子、チャグムを助けたことから、精霊の卵を巡る問題へと巻き込まれる。バルサは幼いチャグムを連れて帝の追手から逃げるが……。
巻が進むごとに国が変わり、その度にバルサが国の命運やもうひとつの世界ナユグを巡って戦います。
タフで身体的にも強くて、優しくかっこいいバルサが最高。30代という大人な年齢なのもポイント高いです。主婦とは違った意味で「守る女」バルサの旅路には燃えました。
人見知り女性がたくましくなっていくやわらかSF『人類は衰退しました』
いつかの未来、人類は衰退し、「妖精さん」と呼ばれる新人類が地上の主役となった。主人公である「わたし(本名は出てこない)」は旧人類と妖精さんとの橋渡し役として働く。
やる気もなければコミュニケーション能力もない「わたし」が妖精さんにまつわる事件に巻き込まれるうちに、冒険への耐性を身に着けていくところが面白いです。
ストーリーが進むほどに怒涛の展開が繰り返されていきます。序盤のほのぼのブラック短辺は序の口にすぎません。
レディースの女の子が覇道を目指す『製鉄天使』
製鉄所の社長の娘赤緑豆小豆は、その鉄を操る能力でレディースとして成り上がる。その後部座席には、マスコットの菫がいた。中学卒業をきっかけに、小豆と菫は離れ離れになるが……。
『赤朽葉家の伝説』のスピンオフですがこれだけでも読めます。
この作品は少女の成り上がり物語でもあり、菫との友情と別離を描いた物語でもあります。
少女ふたりのシーソーゲームのようなアンバランスな関係。物悲しさを感じつつ。関係性萌えで興奮しました。
知略の王女が王子を助ける 『花冠の王国の花嫌い姫』
花粉症なのに花あふれる国エスカ・トロネアに生まれてしまった姫君のフローレンス。彼女は花のほとんどないラハ・ラドマへの輿入れを狙う。ラハ・ラドマの王子の求婚を受けてかの国に向かうが、王子をはじめ周囲には「なぜ大国の姫がうちのような小国に?」と警戒されてしまい……。
ベースは王子と王女のラブストーリーなのですが、話が進むにつれどんどんフローレンスを中心とした政治戦、諜報戦の様相を呈してきます。それでいて、雰囲気は明るいのがすごい。
賢い女子が好きな人におすすめです。
「からゆきさん」大陸を駆ける『芙蓉千里』
ロシアに渡った女郎、いわゆる「からゆきさん」である主人公が、場所を変えながら激動の時代を生き抜いていく歴史ロマン。
「そんなのありかよ!」という展開をしつつも、ひとりの女性が愛のために突っ走る話としては筋が通っています。こんな風に、駆け抜けていけたら幸せでしょうね。
この作品の独特の恋愛観も好きです。普通ではないけれど、みんなに認められはしないけれど、「恋」なんですよね。
属国の大公夫婦が宗主国の乗っ取りを目指す 『プリンセスハーツ』
アジェンセン大公の妃ジルは、実は替え玉の妃である。かりそめの夫であるルシードととは、宗主国パルメニアの乗っ取りを目指して共闘関係にあるのだ。ジルは野望のために策略を巡らせる。
国を盗るためにノリノリで策略を展開させるジルが本当にかっこよくて好きです。対立するキャラクターも個性的で騙しがいがあります。陰謀を操る女子、最高!
一方で、仮面夫婦が本当の夫婦になっていくラブストーリー要素もちゃんとあります。
女子大生がネットロアの世界を大冒険『裏世界ピクニック』
大学生の空魚(そらを)は、条件を満たすと入れる「裏世界」で鳥子と出会う。お金稼ぎになるとも言われ、裏世界に消えた友人を探す鳥子に、空魚は付き合わされることになるのだが……。
ホラー&SF&百合といういろいろなものが混ざり合った作品です。ネットに書き込まれた怪談話をモチーフに、女の子が恐怖の世界を大冒険します。
明るいからっとした雰囲気と同時に、空魚と鳥子のピクニックには破滅的なところも感じさせます。彼女らが破滅に向かわずに済むのか気になります。
女の子を救うために女の子が時間を駆ける『紫色のクオリア』
人がロボットに見える少女、ゆかり。その友人、学(まなぶ)はそれでもゆかりと仲良くしていたが、連続殺人事件をきっかけに、ゆかりの本当の力を知ってしまう。ゆかりが見ている世界とは……。
少し不思議な物語と思っていたら、中盤から学がゆかりを救うために怒涛の展開を始めます。量子論やクオリアという題材を交えつつ、やっていることは「女の子ふたりの関係を描く」ところがすごい。
友人を救うためになんでもするキャラクターが好きならぜひ。
以上です。気になる作品があればぜひ読んでみてください。