ブックワームのひとりごと

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ラテンアメリカ風の世界で孤独な少女と奴隷の男が出会う―マサト真希『アヤンナの美しい鳥』

アヤンナの美しい鳥 (メディアワークス文庫)

今日の更新は、マサト真希『アヤンナの美しい鳥』です。

 

あらすじ・概要

高地に暮らすアヤンナは、ある日奴隷商人に売られそうになっていた異人の男リリエンを助ける。足萎えである男をしぶしぶながらも家に置いたアヤンナだったが、アヤンナの顔にある醜い傷を見ても動じず、尽くしてくれるリリエンに惹かれるようになる。しかしふたりの暮らす王国には、不穏な噂がはびこっていて……。

 

人間の二面性と原始的な愛

魔法の力と引き換えに、顔に醜い傷を持つアヤンナ。彼女はそれゆえに卑屈で、褒め言葉を素直に受け取ることができません。

その卑屈さにときにいらいらさせられることもあったのですが、同時に、彼女は根は優しく、真面目で義理堅い人間だとわかってきます

奴隷商人に売られていたリリエンを助け、自分を騙したアイユ(集落、村のような意味)の少女にも義理を通し、行き倒れている人間がいればまた助けてしまう。

そういう二面性がアヤンナの魅力です。リリエンもだからこそ、アヤンナを褒め愛したのでしょう。

 

二面性を持っているのはアヤンナだけではなく、アヤンナにきつく当たるアイユの里長が実は亡くした息子を深く愛していたり、行き倒れた男が実は……だったり、人間の感情の明暗が矛盾せずに同居しています。

その二面性が物語に深みを与えていました。

 

メインの筋としてはアヤンナとリリエンの悲しいラブストーリーなのですが、アヤンナに性知識が全くと言っていいほどないため、幼児の初恋のような雰囲気です。しかしその、性にはっきり目覚める前の原始的な愛だからこそリリエンは居心地がよかったのでしょう。来歴から考えても。

幸せな終わりとはいいがたい作品ですが、ふたりの出会いは、周りに少しだけ救いをもたらしています。悲しいけれど美しい話でした。

 

現代日本人が想像しにくい特殊な舞台設定であり、ストーリーの進みも遅いため、読むのには苦労しました。しかし苦労したかいがあった作品でした。面白かった!

アヤンナの美しい鳥 (メディアワークス文庫)

アヤンナの美しい鳥 (メディアワークス文庫)