あらすじ・概要
エロ雑誌の編集部で働く山崎の元に、昔の恋人から電話がかかってくる。彼女は昔、山崎を救った女性だった。彼女と出会い別れた記憶を回想しつつ、現代の山崎は病に倒れた編集長を見舞ったり、恋人との時間を過ごしたりしている。昔の恋人と再会した山崎が見たものは……。
牙を抜かれた女たちがヘタレな男とセックスをする話
あんまり男がどうとか言いたくないんですが、男性向け恋愛小説の悪いところを詰め込んだような作品でしたね。
まずストーリーは昔の恋人から電話がかかってくるところから始まるんですが、この元恋人である由希子、本当に主人公山崎にとって都合のいい存在です。
セルフネグレクト状態に陥っていた山崎を救い出し、エロ雑誌の編集者になるために背中を押している。
唯一山崎と別れたことが都合の悪い部分、と言いたいんですが、他の女とセックスをした山崎の前でわめきもせず、静かに縁を切ります。それでいて、再会するとそのことを「ごめんなさい」と言う始末。いやあんたは全く悪くないだろ!! 冷静になってほしい。
この由希子というキャラだけではなく、編集者として取材した風俗嬢可奈も、今の恋人の七海も、主人公である山崎を傷つけることがない。牙を抜かれた女なんですよ。
ヘタレ男が牙を抜かれた女にふわっといい感じのことを言って文学っぽくして終わります。
私は男性向けエロも読むけれど、あれが面白いのは幻想の女を描いていることに自覚があるからです。エロ本をリアルに持ってくる男なんて最悪だっていう共通認識があるからエンタメとして面白いんです。
それなのに、男に都合のいいハーレムものを「文学です」ってツラで出されるこっちの身にもなってほしい。そういうの許されるの紫式部くらいだから。
いや、反面教師として額に飾りたいくらいの作品でしたね。そういう意味では参考になったと言えるかもしれません。