あらすじ・概要
優秀で生徒からの人望も厚く、ユーモアもある教師、蓮実聖司。しかし、その正体は共感能力のない殺人鬼だった。自分を邪魔するものを退学、辞職、死亡へと追い込んでいく蓮実。一方で、蓮実の教え子の怜花は、類まれな第六感で蓮実に恐怖を覚えていた。
破滅に向かう作品ってわくわくするよね
全方位に最悪なサイコパスです。蓮実は善人も悪人も平等に殺します。そこにあるのは、性欲や名誉欲など、ひたすら自分の欲望を満たしていく男の姿。
倫理のかけらもない男なのですが、私、フィクションだと不思議とこういう人間って腹が立たないんですよね。蓮実は愛情による葛藤も憎悪による偏見も覚えず、シンプルな欲求に従って動きます。ある意味このくらい単純に生きられれば楽でしょうね。
上巻だけで破滅に向かって突き進む小説だということがわかります。でも、破滅って一抹の爽快感がありますよね? どんな破滅を見せてくれるのかわくわくします。
しかも長い小説でありながら中だるみするような部分がなく、ガンガン読み進めていけます。
蓮実の鼻歌で流れる『三文オペラ』のモリタート、象徴的に登場する2羽のカラスムギンとフニンもいい味を出しています。モリタートは有志の人がアップしたクリエイティブ・コモンズ動画があったので貼っておきます。
この曲歌いながら血みどろのことしてるのめちゃくちゃ怖いですね。
ムギンとフニンは北欧神話でオーディンが連れている二羽のカラスのこと。
その他にも淫行教師(複数名)、他の殺人犯、蓮実に調教される女子高生など、よりどりみどりなキャラクターも登場します。全員キャラが立っていてすんなり覚えられました。
彼ら全員ろくなことにならないのだろうなと思うとわくわくします。
いや私がサイコパスみたいな発言してしまったんですけど、こういう元気に倫理がない作品はニコニコ笑って読んでしまうんですよね……。部分的に倫理がないと気になるんですけど。メッセージ性がなさそうなところが逆に楽しいです。
下巻も楽しみ。