ブックワームのひとりごと

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異性装をポジティブに捉える「倒錯しない」ラブストーリー―御園生みどり『姫の婿とり 始まりはさかしまに!』

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姫の婿とり 始まりはさかしまに! (ビーズログ文庫)

 

あらすじ・概要

父方の家が祖父を裏切り、敵対する家の男児は殺されると女の振りをして生活してきた千芳(ちか)姫。しかし祖父から婿取りの要請を受け、男が婿を取るわけにはいかないと千芳は逃げ出す。逃げた先で出会ったのは、婿候補のひとりであり男装して世継ぎとなった漣吾(れんご)だった。

 

倒錯しない異性装もの

まず面白いのは、千芳も漣吾も「異性の格好をしていることをネガティブに捉えていないこと」です。

女言葉が素なので感情が高ぶると「てよだわ」で話してしまう千芳こと千寿丸、自分が女である自覚がありながら女の格好の千芳に恋をしてしまう漣吾。「女/男はこうあるべき」という王道から外れたふたりですが、外れていることに対して悲壮感がありません。

状況によって女らしさ、男らしさを行き来するふたりは、肉体的には男女CPなのにシチュエーションによってはBLのようにも百合のようにも見えてしまいます。

でも、「倒錯している」ということにならないのがすごい。あくまで自然に、ジェンダーを行き来しています。

 

私は異性装ものが好きなんですが、異性装ものってどうしても「本当は女/男なのにらしくないことをしている」というのが前提に出てきてしまいます。すごくステレオタイプにこだわった作品になってしまうんですよ。この作品は「らしさ」の固定観念すら壊してしまう力があります

新時代の少女小説という感じで嬉しくなりました。

 

もちろんエンターテインメントとしても面白くて、主人公ふたりはめちゃくちゃいい子でかわいいし、戦国風世界観のちょっと血なまぐさい感じも好きです。

 少女漫画っぽいキラキラした挿絵もストーリーと合っていて素晴らしいです。

シリーズものの1巻っぽいタイトルなのですけれど、話としてはきりのいいところでオチてるので1巻完結ものとしてもおすすめ。

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