あらすじ・概要
文化祭準備中、殺人が生徒に露見しそうになった蓮実。彼はクラスの生徒たちを皆殺しにして証拠を隠滅することを決意する。かくして学校は殺戮の現場となった。次々と殺されていく子どもたち。怜花たちは、見えない殺人鬼から逃げ切る方法を模索していた……。
倫理がある子をもうひとりの主人公とするところがいい
上巻からあるんじゃないかと思っていたスーパー殺戮タイム。盛り上がってまいりました。
一方で、蓮実はすべての人間に対して倫理がありませんが、もうひとりの主人公として倫理的で心優しい怜花を設定するところが犯罪小説としての倫理ですよね。彼女がいることで「ああこの作品は本気で犯罪を肯定しているわけではないんだな」と思えますから。
同時に普通と異常の対比にもなっていて、このW主人公システムは正解だと思います。
「犯罪を肯定しない」という犯罪小説の最低限の倫理をクリアしているので、安心して暴力や殺人をエンターテインメントとして楽しむことができます。
淡々と、鼻歌を歌いながら生徒たちを殺害していく蓮実。これでイケメンで、清潔感がある見た目なのが怖すぎます。
殺戮シーンからは姿の見えない殺人鬼から逃げ回るパニックホラーめいた趣もあり、どきどきはらはらしました。
逃げ切った生徒はだいたい予想通りでしたが、一歩間違えば彼らも確実に死んでいたという緊迫感がありました。
そして、ラストの後味の悪さがね……。普通に終わりはしないとは思っていましたが、最後まで蓮実は蓮実でした。彼に本当の意味で勝つことはできませんね。
しかし長い小説をこの速さで読み切ったのは久しぶりです。それだけ、『悪の教典』が面白かったということです。
「読んでみたいと思って後回しになってる作品」もちゃんと読んでおかないとだめですね。
貴志祐介の作品の感想記事はこちら。