あらすじ・概要
刑務所で服役した元議員の著者は、そこで犯罪を犯した障害者たちの姿を見て衝撃を受ける。著者は累犯障害者について調べることを決意し、さまざまな累犯障害者について聞き取りを行う。殺人を犯した知的障害者、売春で生計を立てていた親子二代の知的障害者、ろうあ者の暴力団など。そこには今までの福祉では助からない人々がいた。
「管理」せずに犯罪から遠ざけるのは難しい
これはちょっと慎重に扱わないといけない本で、なぜかと言うと、この本を読んで「障害者は『管理』されるべきだ」と言い出す人が必ずいると思うからです。
そう言い出す人は悪い人ばかりではなくて、障害者たちを安全な場所で守ろうとする意図を持っているかもしれません。だけどその善意も危険なんですよね。
この本を読んでいて思うのが、障害のある人の「意志」って何なんだろうなということです。
知的障害のある人は、強い言葉で主張されてしまうと意に沿わない言葉でも同意してしまうことがあります。また、「人を傷つけてはいけない」というざっくりした倫理は理解できても、複雑な善悪のグラデーションを理解することは難しいです。
また、この本で殺人を犯した聴覚障害者も、知能そのものには問題がないのに、情報の少なさから健常者の「普通」が理解できていないふしがあります。
はたして彼らの本心はどこにあるのか。「普通」の世界から勝手に決めつけてはいないか? と思えて来てしまいます。
でもそういう情報弱者を好き勝手にさせておいて、破滅したら自己責任にするのも違いますし、明確な線引きはないですよね。
出版社のカラーゆえだろうけど、俗っぽいネタも多く、真面目な人には向かない本かもしれません。
ただ、売春婦の話はこういう本でしか描きにくい話だろうから、それはよかったですね。
文庫版あとがきにあるように、現在は累犯障害者についての意識が高まり、支援を行う団体ができたり、支援者同士で連携がとれるようになっているようです。
それでもそう簡単に解決する問題には見えないので、まだまだ見えない累犯障害者たちはたくさんいるんだろうな。