ブックワームのひとりごと

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WHOの政治戦から見る人類と病との戦い―詫摩佳代『人類と病 国際政治から見る感染症と健康格差』

人類と病 国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書)

 

あらすじ・概要

新型コロナウイルスよりずっと前、ペストや腸チフスの時代から、人類は病と闘ってきた。人類の「病との戦い」はどう進歩し、どのような政治的駆け引きがなされてきたのか。WHOの取り組みとその中の政治戦を紹介しながら、人類と病の現代史を紐解いていく。

 

やっぱりWHOって必要だよね

デマが多いのであまりTwitterでコロナ関連の情報を収集しないようにしているのですが、かと言って何も知らないのも何なので、できる範囲で感染症関連の本を読んでいます。これはその一冊。

 

何かと批判も多いWHOですが、これを読むとやはり必要なのだと思えてきます。感染症が容易く国境を超える時代だからこそ、複数の国が連携して感染症問題に取り組むことが必要ですし、今それができるのはWHOしかありません

しかし政治のフィールドになってしまっているのも事実です。冷戦時代は感染症撲滅運動が米ソお互いの権威や国力を高めるために利用されています。一方で、仲の悪い国が感染症対策だけは足並みをそろえることもあります。

結局WHOが悪いのではなく、運用する人間の問題なのでしょう。私みたいな一般人は直接WHOに関わる機会がありませんが、名前だけで漠然としていたWHOが何をやっているかわかったのはよかったです。

 

この本は前半は感染症の話、後半は生活習慣病の話になっています。生活習慣病の章は、たばこ問題に関する話が面白かったです。たばこを規制したいWHO、医者、健康を増進する市民団体、健康問題を扱う政治家と、たばこを規制されたくないたばこ会社、そのたばこ会社の息がかかった政治家。この二者がどったんばったん綱引きをしてきた歴史が面白かったです。

私は嫌煙家ではありますがたばこ完全否定派ではありません。しかしJTを始めとするたばこ会社がやってきたことがわかると、嫌われてもしょうがない気がしてきます。これほどの世界規模の利権があるだろうか……。

こういうことを書くと酒はどうなんだという話になるんですが、酒は「少しなら健康にいいため規制される可能性は少ない」と筆者は述べています。でも飲み放題とか度数が高いアルコールなんかはひょっとしたら規制されるかも、とたばこの話を読んでいて思いました。

 

かなり淡々とした本で「面白い」という感じではありません。しかしこのコロナ禍でみんな混乱して過激な言葉が増えている中、この淡白さが心地よかったです。

 

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