あらすじ・概要
男子だけが感染する奇病が蔓延した江戸時代。女性と男性の力関係は逆転し、女性が家督を継ぐ社会となった。そして、江戸幕府の長、将軍も女に。その大奥では、全国から美男が集められ、将軍の寵愛を争っていた。徳川の時代が進むごとに、社会の仕組みも移り変わり……。
何だかんだ女にも男にも優しい話だった
レンタルコミックでのんびり読んでいたのですが、ちょうど完結ということで最終巻は購入しました。
シリーズを振り返って思うのは、男にも女にも優しい作品だったよね、ということです。いや、ストーリー自体はめちゃくちゃ過酷ではあるんですが、根底にある人間観はとても優しいです。
フィクションではありますが歴史ものという関係上、道半ばで死んでしまうキャラクターがとても多いです。しかしそれは、無意味な死ではない。誰かが何かを引きついで、次の新しいものに変えていきます。
それからジェンダー観。『大奥』では男も女もその性別ゆえに搾取される場面がありますが、それは悪人がいるからではなく、社会システムの問題です。
悪役的な人間はいるにはいるんだけれど、彼らを殺したところでその搾取がなくなるわけではありません。
それは残酷かもしれないけれど救いでもあります。変えるべきは個人ではなくシステムだ、という価値観は恨む人間が少なくて済みます。
この作品が好きだったのは、女性がバリバリ活躍するシーンがあったからです。だから私たちの知る明治維新に、いわゆる「男の歴史」に接続しちゃったのはちょっとがっかりしました。
でも作者としてはそのがっかりも織り込み済みで、だからこそラストシーンにあの歴史上の人物を出したのだろうなと思います。「女の歴史」は終わるのではない、ここから始まるのだ、というメッセージだったのかなと。
印象深く、また、いろいろ考えるきっかけをくれた作品でした。完結おめでとうございます。