ブックワームのひとりごと

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転生ものをリアルに書くとこうなる―小東のら『転生者の私に挑んでくる無謀で有能な少女の話1』

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転生者の私に挑んでくる無謀で有望な少女の話 1 (ヒーロー文庫)

 

あらすじ・概要

神童と呼ばれる少年、ジークはいつもテストで100点を取っていた。そんなジークに対抗心を燃やす天才少女アーニャは、テストがあるたびにジークと対決しては負けている。しかしジークには、「前世の記憶がある転生者」という秘密があった。ジークが年を取るにつれ、アーニャとの差を見せつけられていく。

 

めちゃくちゃテーマが強くてすごいな

KindleUnlimitedで読了。

世の中の転生ものに対するアンチテーゼだこれ!

どれだけ転生者があらかじめ子どもにはない知識を持っていて、経験を積んでいようと、本当に豊かな才能を持つ人間には勝てない、というシビアな話です。

確かに、実際にリアリティを持って転生を書こうと思うとそうなりますよね。その人がもともと頭がよくない限り、知識チートをすることは難しいです。だってその世界にも天才がいるんだから。

 

ジークはずっと前世の知識を利用してチートし続けることに罪悪感を持ち、アーニャや友人たちとの楽しい時間にもちょっと距離を置いて見てしまいます。その罪悪感もいかにもありそうでもの悲しかったです。

それでもジークがアーニャや友人たちと一緒にいたいと思い、そのために努力したのは変わりありません。そしてその、「一緒にいたい」という思いそのものは報われたのにほっとしました。

ジークは確かに天才には勝てないかもしれないけれど、勝つことがすべてではありません。それに友人と常にすべての項目で並び立って生きなければならないわけではありません。頭の良さが違っても、譲ったり譲られたりしてトータルで仲良くやっていければそれでいいんじゃないかな。

 

異世界ファンタジーと言いつつほぼ現代社会みたいな話なので、異世界にする必要あった? と思うところはあります。でも転生もののアンチテーゼなのでファンタジーにする必要があったのかもしれません。

 

ものすごくテーマの強い作品なので、好き嫌いはかなり分かれると思います。が、私はこの作品のメッセージすごく好きですね。伝えたいことを持ち、それをちゃんと小説として書いたところは好感が持てました。