あらすじ・概要
新聞社の企画のアマゾン旅から帰ってきた高梨は、徐々に「死」に執着するようになり自殺してしまった。高梨の恋人だった早苗は、高梨と道中を共にした学者たちが次々に不可解な自殺をしたことを知る。彼らは「天使の囀り」を聞いたという。早苗は死の真相に迫るべく、自殺した人々を調べる。
ちょっと予測がついたくらいじゃ面白さは減らない
KindleUnlimitedで読了。「てんしのさえずり」と読みます。
伏線の作り方、その回収の仕方がすごい。メインストーリーの謎解きはもちろんのこと、何気ない会話やアイテムが後半重要な役割を果たします。
天使、R18ノベルゲームなど、リフレインのように何度も象徴的に使われる道具もあります。出てくるたびにその意味が変わるところが恐ろしいです。
実はこの作品の、恐怖の原因たる〇〇について昔調べたことがあるので、早い段階で自殺の謎の予測はつきました。だけどそれ以上に重ねられた謎もあって、ちょっと予測がついたくらいでつまらなくなる作品ではありませんでした。
守護天使を重視する謎のセミナー、蜘蛛で興奮する男、描写が強くて「なぜ」なのか続きがきになってしまいます。そしてちゃんと答えを用意してくれています。
最後の最後で明かされるあれの使用法が皮肉にも救いにも見えて、複雑な心境で読み終えました。でもこういうすっきりもしないし絶望もしない終わり方でよかったかもしれません。安易なオチより決着はついていました。
しかし主人公の職業や性格そのものも伏線だったとは……脱帽です。
昔の作品なのでジェンダー観など古く感じるところもあるんですが、「女が活躍する小説」ではあります。恋人の死をきっかけに事件を解決する女、面白かったです。