あらすじ・概要
西幽の雪山で暮らしていた浪巫謡(ろうふよう)は、母に剣と歌の特訓をさせられていた。母を事故で亡くし、街に出てきた浪巫謡は、歌の能力を買われ店に置いてもらうこととなる。しかし周囲は浪巫謡を利用するだけだった。店の摘発をきっかけに宮中に向かい、そこで皇女のお気に入りの楽士となるが……。
サンファンには珍しくまっとうにいい話でした。これ、凛雪鴉(りんせつあ)が出てこないからですね。ひとりでシナリオのろくでもなさを上げてくるキャラクター……。(そこが面白いんですけれど)
雪山から街へ、そして宮中へ流れながら、誰かの命令に従って生き続けた浪巫謡が、殤不患と出会って自分自身の愚かさに気づき、自分の人生を歩み始めます。「自分は何者か」という定義を自分自身で勝ち取る話です。すごく王道で最高。
真っ白な衣服も他人の色に染まる今までの人生の象徴なんでしょうね。
そのようなまっすぐなシナリオとは裏腹に、「癖」もすごかったです。
宮中に召し抱えられた浪巫謡は西幽の皇女嘲風に気に入られ、「鶯」と呼ばれて寵愛を受けます。その嘲風が邪悪な美少女で、戯れに宮中にやってきた芸人を殺害していくので恐ろしいです。
美少女に飼われる美青年というシチュエーションが見られたというだけで1億点追加しそうになりました。いや、いいですよね、耽美で……。
自分はそういうつもりが一切ないのに「傾国の男」にされてしまった浪巫謡もかわいそうでかわいいです。
そういう耽美な設定も、もともとのシナリオの良さあってこそのことですよね。いやはや、最高でした。
しかし歌手に声優をやらせて、こんな完璧と言っていいキャラクターを作れるのはすごいですね。
徹底した当て書きと、歌手であることを最大限生かして劇中歌を挿入、設定も歌手だからこその内容です。
浪巫謡がすっかり好きになってしまいました。