ブックワームのひとりごと

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男性作家のコミックエッセイおすすめ13選

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コミックエッセイの著者って圧倒的に女性が多いですよね。コミックエッセイに興味を持つ層が女性に偏っているんでしょうか。

今回は少数派である男性のコミックエッセイの中からおすすめをまとめました。

 

 

 

漫画家のくだらなくて笑える起承転結 『山本アヒルの実録四コマ』

漫画家、山本アヒルが日常をつづった四コマ漫画シリーズ。

漫画を描く日常、食べ物のこと、友人との同居生活のこと、かなりくだらない内容が多いんですが、それゆえに気楽に読めます。

自分のだめな部分を笑いに変えて提供してくれます。

しょうもないんだけどそのしょうもなさにほっとするというか、元気がもらえます。

山本アヒルの実録4コマ 1 (電撃コミックスEX)

山本アヒルの実録4コマ 1 (電撃コミックスEX)

 

 

 だめ男が父親になって奮闘する『打ち切り漫画家(28歳)パパになる。』

 漫画を連載中の著者は、妻に「子どもがほしい」と持ちかけられる。連載はあえなく打ち切り、そして妻は妊娠する。妻子を養うために著者は大工仕事を始めるが、あまり向いていない仕事のようで……。男性の視点から「子どもを育てること」を描いたコミックエッセイ。

著者は結構情けない人で、せっかく得た仕事を辞めてしまったり、だめになりそうな連載を断れなかったりします。最後まで読んでも、金銭的に安定はしていない生活で、余計なお世話ながら心配になります。

しかしその正直なだめっぷりを正直に冷静に描いているところが好きです。

honkuimusi.hatenablog.com

 

 もし家族が犯罪者になったら『裁判長! ぼくの弟懲役4年でどうすか』

 裁判漫画を描いていた著者の弟が突然逮捕された。容疑は売春防止法違反。裁判の経緯、弟への思い、母親の動揺を著者は漫画として記録していく。ある意味、一番リアルな裁判コミックエッセイ。

著者の弟は、普通に会社で働く社会性があるものの、どこか成り行きで生きていて、通常の人が思いとどまるような部分でアクセルを踏んでしまうタイプ。 その性質が災いして、未成年を売春業者に斡旋するという罪を犯します。

著者の苦労と母親の困惑、そして実の家族が刑事裁判を受けたときの印象。どれも鮮烈で面白かったです。

honkuimusi.hatenablog.com

 

母が残した借金のために保険会社と裁判『母の形見は借金地獄 全力で戦った700日』

 母親から虐待を受け、また、自身もゲイであるためいじめの対象になっていた著者。そんな著者も現在は落ち着いた暮らしをしており、母とも和解を試みていた。しかし、母が急死。彼女が残したのは、多くの借金だった。著者は借金を返済するため、保険会社を相手取り、裁判で生命保険の金を入手しようとする。

著者は母親から虐待を受けていたため、今でも母親に対して複雑な気持ちがあります。しかし母親が虐待するほど追い詰められたのは、父親が身勝手な行動をして母親を顧みなかったことも一因でした。

縁を切られて当然のことをした母親を見捨てず、さらにいいところを見てあげようとする著者の態度はすごいですね。

ゴシップではなく、人間関係について希望が持てる話です。

honkuimusi.hatenablog.com

 

宅配便の著者による面白ハプニング記録『リアル宅配便日記…毎日こんなことが起こってます!!』

社内新聞の四コマを描いたことをきっかけに、自身の配送業を漫画にし始めた著者。ブログを解説し、面白いお客さんや、配送時の面白いハプニング、個性的な同僚たちを四コマで楽しく語っていく。身近なようで知らない宅配便の世界は、面白ネタで満ちていた。

四コマ漫画に描かれているのは、親切でちょっと変わったお客さんたちとの交流、個性的な同僚の姿、繁忙期の大混乱。当事者だからこそ書けるネタばかりです。

「不在票あるある」とか「代引きあるある」とか細かすぎて伝わらないあるあるネタに笑います。よく観察されてるんだなあ。やっぱり客側としても配達業者さんに見られていることを意識しておこうと思います。

四コマの内容は基本的に楽しくポジティブで、嫌な話もあるにはあるけれど、ユーモアでくるまれているので不快に感じません。

honkuimusi.hatenablog.com

 

アトピーの娘に悩まされる売れない漫画家『パパ、かいい!』

売れない漫画家である著者は、外で働いている妻の代わりに家事を引き受け、アトピー性皮膚炎の娘を育てている。四六時中かゆさで騒ぎ続け、夜中もかいてやらないと眠れない娘に、夫婦は疲労していく。健康食品や自然療法を次々に試しても、娘はよくならず……。

私はあまり健康食品だの自然療法だのを信じていませんが、この作品はそういうものに頼ってしまいたくなる心理を丁寧に描いていました

常にかゆがる娘にノイローゼになりつつも、何とか治してやりたい、楽にしてやりたいという一心で、夫婦は食品やローション、自然療法を試します。病気を持つ子どもを育てる苦しみと、子ども自身への愛情で追い詰められているのです。

著者の売れない漫画家としての葛藤や、妻に食わせてもらっているうしろめたさも挿入されていて、その悲哀も面白かったです。

honkuimusi.hatenablog.com

 

 夫婦がうまくコミュニケーションを取るには『僕と妻の場合 僕たち夫婦が仲良く暮らしている理由』

漫画家の著者は、外に働きに出ている妻と暮らしている。家で仕事をする中で、夫婦が仲良く暮らす工夫とは……。「コミュニケーションが苦手」なふたりの大人が、試行錯誤の末手に入れた平穏な生活を描く。

著者と妻は、まめに感謝を口に出したり、つらいことがあると内容を丁寧に説明したり、とにかく「言わなくてもわかってもらえる」という甘えを排しています。そうすることで、コミュニケーションのコストを下げています。

言外の意味が分からない人間としては、こういう風に生きられたら楽だろうなとうらやましくなりました。もちろんお互いの協力は必須ですが、言葉をまめに交わすことによって将来の軋轢を減らしているところがすごい。

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 新卒でブラック企業に入ってしまった男の悲劇『新卒はツラいよ!』

著者は、不況を潜り抜けIT企業へ就職した。しかしそこでは、プログラミングをろくに覚えないまま仕事をし、なぜか社長室に呼ばれ、イベントの担当者になる……などおかしな仕事をさせられる。さらに長時間労働、突然の異動など、一人前になっても周りに振り回される。

何度も修羅場を潜り抜けてきた著者は、悪い意味で上司に信頼され、使いやすい駒になってしまいました。おそらくこういう人が、だめな企業を支えてしまっているのでしょう。なまじ有能だからこそ、人の分の仕事を背負ってしまう

若手なのにプロジェクトの運営スキルや新人の教育スキルを得てしまった著者はすごいですが、それでもそういうスキルを平和的に得るに越したことはないですからね。得てしまった「たくましさ」に苦笑いしてしまいました。

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イラストレーターが乳がんの妻を支える『ちびといつまでも ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節』

イラストレーターの柏原昇店。彼の妻が、乳がんであることがわかる。夫婦は、戸惑い悩みながら、抗がん剤治療を選択。つらく厳しい闘病生活が始まった。夫の視点から乳がん治療を描くコミックエッセイ。

漫画としては文字が多いのでちょっと読みづらいですが、その分情報量は多いです。がんとは何か、がんのステージの話、お金やもらえる支援のこと、それらが監修入りでがっつり書かれているのでがんについて知らない私にとってはありがたかったです。

著者自身も、子どもを三人抱えながら仕事をし、家事をこなし、妻の看病を行う生活に疲弊していきます。やっぱり闘病はその人個人の問題ではなくて、家庭の問題ですよね。

男性が病気の伴侶を支えることを描いたコミックエッセイでした。

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わがままな息子に振り回される父親の笑える育児漫画『息子の俺への態度がヒドイので漫画にしてみました』

漫画家の息子ゆうたは、母親が大好きなあまり父親を敵視し、意地悪な態度で接している。父である著者はそんなゆうたに手を焼いている……。子どもの理不尽さを、父親視点から語っていくコミックエッセイ。

エッセイ漫画というよりギャグ漫画かな? と思うくらい笑えます。オチまでテンポがいいですし、息子の生き生きとした表情で余計に笑えます。実際にはもっと苦労しているんでしょうが、苦労をコミカルな笑いに昇華しているところが面白いです。

子どもの暴風のような理不尽さを、自分が語り手になって解説していく著者には同情します。無理のない程度にがんばってほしいと思えてきますね。

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猟師が語る狩猟の楽しさとジビエ飯『山賊ダイアリー』

猟師の免許を取得した著者。ウサギ、ハト、シカ、イノシシなど、野生動物を狩って食べる生活を始める。猟師仲間との交流や罠の仕掛け方など、猟師の日常を描いたコミックエッセイ。

動物を殺して解体して食べる、という行為を日常のものとして行うという非日常が面白いです。「自分がやらないことを作者がやってくれる」ところが好きですね。

猟師仲間とのわちゃわちゃした友情も面白かったです。軽口をたたき合い、現金なところもあるけれど、なんだかんだで助け合っているところがほのぼのしました。みんな狩猟が好きなんですね。

ほとんどの猟師の奥さんたちが狩猟を嫌っているのもリアルで笑いました。ありそう……。

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 アウシュヴィッツ収容所の凄惨さと親子の断絶『マウス アウシュヴィッツを生き延びた父親の物語』

ユダヤ人であり漫画家の息子が、アウシュヴィッツを生き延びた父親に当時のことを聞き取っていく。凄惨な収容所での生活、そしてそこでどのようにして命を繋いできたのか。同時に著者は、父親とのジェネレーションギャップに悩まされる。

この漫画では、ユダヤ人はねずみ、ドイツ人は猫、ポーランド人は豚と、人種ごとに動物になっています。人間をねずみや猫に擬獣化していることによって、どこか突き放したような、クールな印象を持ちます。

この作品の面白いところは、ホロコーストの悲惨さだけでなく、同時に親子の断絶を描いているところです。著者であるアートは、父親であるウラデックを理解しようとしますが、ケチでわがままな彼とはけんかばかり。肉親なので見捨てることもできません。親子の断絶を目の前にした無力感、虚しさがリアルでそちらはそちらで鬱々となります。

 父親に思うところのある男性が読むと共感できるかもしれません。

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とほほで笑える30代の自分探し 『日本をゆっくり走ってみたよ~あの娘のために日本一周』

36歳の漫画家・吉本浩二は連載していた漫画が終了し、無職状態になった。このままではいけないと、バイクで日本一周をすることに決めた。Eさんという憧れの女性と再会し、日本一周後にまた会うことを約束。Eさんにふさわしい男となるため、この度でたくましくなろうとバイクを走らせる。

日本一周というと聞こえはいいんですが、その内容はかなりグダグダで、成功談より失敗談のほうが印象的です。夜行フェリーで長話の人に捕まり寝かせてもらえなかった夜、実家に帰ったときの父親の不倫騒動など。

情けない話である一方で、漫画には「自分をよく見せよう」という下心がなく、それでいて「いい男になってEさんに再会したい」という目的があるので極端に道を外すことはありません。だから安心して読めました。

こんなに素直に描いてしまっていいの? と思うくらい正直な漫画です。

honkuimusi.hatenablog.com

 

以上です。興味があれば手に取ってみてください。